NHK-FM能楽堂『烏帽子折』の録音2

今回の『烏帽子折』の録音、大変奇遇なことで、実は、来年(2019年)9月23日(月祝)「第6回 和久荘太郎 演能空間」(於・宝生能楽堂)にて、能『烏帽子折』を凜太郎の子方にて私がシテで勤めることが決まっており、そのこともあって、家元が凜太郎に今回のお役をご指名いただいたのです。

しかも、地謡は武田孝史・朝倉俊樹・山内崇生の三師にて依頼済み。今回の録音とほぼ同じメンバーです。この録音があったから、来年『烏帽子折』を勤めるのではなく、私の『烏帽子折』計画及び依頼のほうが先、という奇遇。これを好機と、またはりきって参りたいと思います。

ですから、皆様には、来月(9月9日)にラジオの音で聴いて頂いた素謡『烏帽子折』を、来年の演能空間の舞台上にて立体化した能『烏帽子折』をご覧いただく、という、2段階のご鑑賞をしていただくのが一興かと存じます。

演能空間の『烏帽子折』の間狂言(盗賊の棟梁)は、先頃、東京オリンピック・パラリンピック開会式・閉会式の演出統括責任者に選ばれた野村萬斎師。間狂言とは別に本狂言(曲目未定)も萬斎師にお願いしておりますのでご期待ください!


NHK-FM能楽堂『烏帽子折』の録音1

本日、渋谷のNHK放送センターにて、来月放送予定の『烏帽子折』(素謡)の録音でした。

 


【放送予定】

平成30年9月9日(日)午前6時~6時55分(NHK-FM)

素謡『烏帽子折』

シテ 武田孝史

ツレ 朝倉俊樹

ワキ 山内崇生

ワキツレ 和久荘太郎

若武者 佐野玄宜

子方 和久凜太郎


 

通常、素謡やNHK-FMの録音では、子方役も大人が勤めますが、今回は凜太郎(12歳)にお役をいただき、毎日稽古に励みました。

凜太郎がNHK-FMでお役をいただくのは、3回目。

1回目は、6歳で『唐船』の日本子役。小学校に入りたてで、まだ幼児のようなときでしたので、私自身が大変不安に思っていましたが、シテの金井雄資師の優しく的確なご指導もあり、なんとか無事勤めることができました。

2回目は、10歳で『歌占』。ちょうどその録音の直前に、実際の能の舞台で『歌占』の子方を2回(小倉伸二郎師と私相手)勤めましたので、これは心配なく勤めることができました。

NHK-FMの録音では、間違いが許されないので、我々本職でも謡本を見て臨みますが、前回2回とも、凜太郎は無本で臨みました。これは当然のことで、子供の稽古は謡本(能の台本)は見せずに、全て口伝(口移し)で稽古します。

ただ、今回は、『烏帽子折』の子方の謡は膨大な分量であること、また、子方とはいえ、心身と思考もだいぶ成長してきましたので、日常の稽古も徐々に謡本を見せて稽古するようになってきた、ちょうどよいタイミングであったこともあり、我々同様に謡本を使って録音に臨みました。

(続く)


お知らせ(八ヶ岳薪能 能『邯鄲』の子方について)

来る8月3日(金)開催の八ヶ岳薪能にて、能『邯鄲』(シテ 辰巳満次郎)の子方に「和久凜太郎」と記載されていますが、これは間違いで「片桐遵」が正式な配役ですので、お知らせ致します。

 

度々、色々な方に、「息子さん、八ヶ岳薪能にご出演ですね。観に行きます。」などとお声がけ頂き、本役として稽古に励んでいる片桐遵君に申し訳ないので、この場を借りてお知らせ致します。

決して凜太郎の代役ではなく、本役として片桐遵君が配役されていますが、チラシの記載に間違いがあるようです。(確かに、初期に凜太郎にはお声がけ頂きましたが、この日は小学校最後の林間学校が重なっており、最初の段階で丁重にお断りした次第です。)

この片桐遵君、名古屋で活躍する子方で、小学4年生。顔も可愛くて、謡も型(舞)もしっかりしていて、将来が楽しみな子方です。私自身も、いずれ共演できるのを楽しみにしています。


附祝言について

本日は、ちょっと専門的な話題を。

 

謡会の最後は、めでたい文句で結ぶ習慣があります。

先日の甲府・武田神社の謡初にては、留めが『紅葉狩』という鬼の能だった為、附祝言(つけしゅうげん)として、『五雲』を謡いました。『五雲』は、昭和に出来た宝生流独自の祝言小謡。「流れ久しき栄えかな」とめでたく結びます。

但し、その日の番組に他流派の方がいらしたり、会場が他流派のお舞台などのときは、『五雲』は遠慮して、他の小謡を謡います。

附祝言には、『高砂』『猩々』『難波』などが能く謡われます。もちろん、『五雲』ではなく、これらを最初から附祝言として選択して良いのですが、その日の番組内と重複する曲は避けます。

ところで、番組の最後に上記の、『猩々』などの祝言の曲が配されている場合は、重ねて附祝言を謡うことはしません。すなわち、『猩々』が留めならば、その後に『高砂』(千秋楽)の附祝言を謡う、などということはしない、ということです。この点は、誤解されている方が多いようにお見受けします。

また、めでたい文句で結んでいる場合も同様に、祝言は付けません。

さて、ここで疑問が沸くのが、後半が仇討ちの物々しい曲『夜討曽我』。「引っ立てゆくこそめでたけれ」と、表面上はめでたい文句で結んでいますが、このような殺伐とした曲で謡会を結んでも良いのでしょうか。シテの曽我五郎が大立ち回りの末、敵に捕縛されて、幕へ猛スピードで連行される時の最後の文句。これは、謡の文章を熟読するとわかるのですが、大立ち回りが進行してくると、主客転倒して、敵の立場として「めでたけれ」と言っています。

そのような背景はありますが、それとは関係無く、「めでたい」文句で結んでいるので、『夜討曽我』が番組の留めに配されていれば、附祝言は謡わなくて良いのです。16代宝生九郎師の文章としても、そのように書かれています。


2回目の声帯ポリープ摘出手術④

(続き)

よって、全く重篤な病気の手術ではありませんので、どうかご心配なくお願い致します。「わしゃ心配しとらんよ」という方が多数を占めると思いますが、中には、かなり衝撃を受けて下さる方がいらっしゃるので、命に関わる病気ではないということを、しっかりご説明しておきたくて、このポリープシリーズは第4弾に至ります。

全身麻酔というリスクはありますが、ポリープ以外の手術も含めて、今まで数回やっても、ちゃんと元気に覚醒していますので、全く心配していません。

前回の手術及びリハビリは大成功で、声が能く出るようになりましたので、今回のリハビリでは、逆にその成功経験が仇にならないよう、慎重に進めようと思います。大体がすぐ調子に乗る性質、早めに声を出したりしないよう、意識して注意します。

前回のように、麻酔から覚めた瞬間に「もう終わったんですか⁈」と叫ばない練習や、声を出さないうがいの練習、寝言を言わない練習(所詮無理ですが)、声を出さないで謡を覚える練習などを、今から日常生活で癖を付け始めています。

以上で、ポリープシリーズを終了いたします。ご愛読ありがとうございました。


2回目の声帯ポリープ摘出手術③

(続き)

1週間の沈黙療法も虚しく、血豆はポリープに昇格。晴れて(腫れて)手術が決定しました。このポリープが手術日迄に引っ込めば、手術の必要はなくなるとのことですが、その確率は5%程度。密かに一縷の望みをかけていますが、所詮無理なのは、自分が一番分かっています。

沈黙療法後、日に日に、自分でも驚くほど声が出るようになってきたので、治ったのでは、と思う時があるのですが、診察を受けると、その答えはバツ。おそらく、身体がポリープの存在に順応して、勝手に工夫をして声が出るようになっているようです。

息が洩れているのが、自分でも能く分かります。出す息全てが、声(音)にならないのです。だから、以前は一息で謡えた箇所を、人にはわからないように、途中で息を盗んで続けて、一息で謡っているように聞かせています。その為、腹の力や圧力が倍くらい必要で、誠に疲労します。

現在ポリープ氏は、2枚ある声帯の片方だけにいらっしゃるのですが、放っておくと、声帯同士ががぶつかり合って、もう片方にもポリープ氏の相棒が出来て、声帯がきっちりと塞がらなくなり、遂には声が出なくなる、というシステム。いつそうなるかわかりませんが、近い将来の話なので、今のうちに取ってしまう、という主治医のご判断です。

(また続く)


2回目の声帯ポリープ摘出手術①

皆さまにご報告です。

今月末に、2回目の声帯ポリープ摘出手術を受けることとなりました。
前回は、約3年前。同じ都内の大病院ですから、もう慣れたものです。

前回の手術では、舞台をいくつか代役をお願いしたり、お弟子さんのお稽古を丸々一か月間休ませて頂くなど、少なくないご迷惑をおかけしました(そして収入が一か月間、全く途絶えてしまいました‥)。

しかし今回は、ちょうど年末年始にかけて入院・手術及びリハビリのスケジュールを組むことができましたので、舞台もお弟子さんのお稽古も、一つとして休むことはありません(手術が決まった後に、この期間内のお仕事をご依頼頂いたものは、全てお断りしています)。

しかし、実際には、お弟子さんのお稽古に関しては、12月の前半と1月の後半にまとめて、無理な日取りをしています。

また、リハビリ期間中にも舞台出演がいくつかあるのですが、フルボイスで謡うことは主治医に止められていますので、控えめに謡うことになります。

そういう意味では、やはり多少なりともご迷惑をおかけすることになります。

(続く)


ホットシャワー5

これ、A&D社の「ホットシャワー5」。吸入器です。

大変優れた商品で、在宅の日は、これで1日に3回吸入しています。

実は、通常の吸入器の機能では、蒸気の粒子が大きくて(10ミクロン〜40ミクロン)、声帯まで届きません。この吸入器は、蒸気が5ミクロンまで小さくなり、声帯までしっかり潤すことが出来る、とのことで、3年前の声帯ポリープ切除手術の前から、主治医から「アマゾンで買いなさい」と勧められて、それ以来愛用しています。

 

当時、「能楽師は普段のケアが足りない人が多い」と言われてしまいました。このようなケアは、洋楽の方など、声を出すプロフェッショナルは当然のことだそうです。

 

風邪の予防や、花粉症、鼻詰まりなどにも最適。それ用に、付け替えられるノズルが3つ(吸入用マスク、口用、鼻用)付属しています。

手入れも、慣れればそう面倒ではありません。

 

決して、A&D社のまわし者ではありません。一家に一台、お勧め致します。


気の入れ方

昨日、「満次郎の会」が済み、気持ちがやっと一段落しました。11月に入ってから、役(装束を着て勤める能の中の一役)や、大事な地謡や催しがずっと続いていましたので、気が張っていました。

 

「満次郎の会」では、能『景清』の従者、新作能『マクベス』の地謡、長い仕舞3番の地謡、と盛りだくさん。主宰の満次郎師はもちろんそれどころの大変さではありませんが、当然私とは器が違いますね。私は、私の身体を使った出来る限りの最善を尽くします。お客様に白昼夢をご覧頂く為に。

 

本日は、長野県小布施町にて、佐野 登師の尽力の催し、「第4回おぶせ能」に出勤の為、長野新幹線車内です。こちらは、能『土蜘』の地謡3番手と仕舞3番の副地頭。地謡が大事。

 

昨日で一段落、と自分に言い聞かせて気を一度ゆるめましたが、会場に向かうに連れて、このようにまた自分に言い聞かせるように、改めて気を入れていくのが常です。

 

冷静に客観視すると、なんだかいつも暑苦しい吐露ですみません。聞いてるだけで苦しくなるかもしれませんが、そういう性質なので、お許しください。


カーシェア1

車(自家用車)を持っていません。

 

子供が小さい時は、妻の為にも車が欲しいと思うことはしばしばありましたが、維持費の問題や、東京は駐車場代が高いこと、また、私自身が車をそう頻繁に乗るわけではないので勿体ない、そして、東京は交通網が発達しているので、車が必ずしも必要でない、などの理由で見送ってきました。

 

若い時から、「車を持たないのは、(能楽師として)身体を鍛える為だ」と言い張っていました。実は今でもこれが最大の車を所持しない理由です。また、運転してしまうと、稽古をする時間が減ってしまいます。私は、移動中が一番集中して謡を覚えることができるのです。むしろ、移動中以外は全く覚え物をしない(出来ない)、ということが習慣づいてしまいました。だから、稽古時間を減らしたくないので、新幹線や電車に人と連れ立って乗車することがあまり好きではありません。

 

運転自体は、家元(先先代及び先代)の内弟子時代、家元やそのご家族の運転で、都内はもちろん、かなりの長距離も頻繁に運転しましたので、不安はありません。家族旅行などで必要な時は、レンタカーを借りていました。

 

ところが最近、「カーシェア」が大変使い勝手が良くなってきたことがわかり、半年程前から頻繁に利用しています。月会費もそう高くありません。15分からの短時間の利用も可能、もちろん、レンタカーのように数日借りてしまうことも可能。自宅の近くに、カーシェアの基地がかなり沢山有り、予約いっぱいで借りられないということもまずありません。予約は、スマホで便利に。時間の変更やキャンセルも自由にできます。最近、ガラケー(この言葉、好きではありませんが)からスマホに戻したこともあり、大変便利。出張や旅行先でも、スマホを使って基地を検索して予約。気軽に借りられます。まるで、全国各地に自分の車を持っているような感覚。

(続く)