侍女の写真
凜太郎(5歳)が、先の2月に西王母の子方(侍女)を勤めた折の写真です。
鬘をつけると、凛々しいまゆ毛が隠れて、別人に見えます。
本人は、全部出来上がって鏡の間で自分の姿を見た途端、大変不機嫌な顔になりましたが、どうせ頑固おやじに怒鳴りつけられるであろうことを察して、素直に舞台に出ました。
凜太郎いわく、「幼稚園の○○ちゃん(女の子)に似てた」。
幼稚園児の男心は複雑です。
早いもので、明日から年長さんです。
直面雑感
再来週(4月14日土曜日)勤める『小袖曽我』は、直面(ひためん)の能です。
直面とは、面をかけずに素顔で舞台に立つこと。
自分の顔を能面として扱う心得を要求されるので、表情を出すことは許されません。
実は私、直面のシテを勤めるのは初めて。
ツレや仕舞、舞囃子などはもちろん直面で数多く勤めておりますが、シテとなるとどうなるのでしょうか。
自意識過剰なだけかもしれませんが、顔を見られている、と感じるのが恥づかしいのです。
今回は直面と言っても、侍烏帽子(折烏帽子とも)という物を頭に載せているので、それ程は心配はしていません。
歌舞伎の化粧と同じく、能の場合も面をかけたり、鬘や冠をつけることによって、「変身」を遂げて、腹をすえる事が容易くなるのかもしれません。
鏡の間で面をかけて、自分の姿を見ていると、やはり「その気」になってきます。
この「鏡の間で床几にかけて鏡に自分を映す」行為の時間には、大変個人差があるようです。
出番のぎりぎりまで面をかけずに、直前にかけてすぐ幕の前に向かう人もいますが、私は、かなり早い段階で面をかけて、自分の姿を見込んで、精神を統一したいと考えております。
これは、実はシテの特権(他の役者は出番まで立ったまま)なのですが、直面のシテもやはり、装束が着いたら鏡の前で床几にかけて、自分の姿を映さなければなりません。
どんな気持ちになるのでしょうか。
6月には、名古屋宝生会定式能にて、『是界(ぜがい)』という、これまた直面(前シテ)の能が控えています。
小袖曽我
来月4月14日(土)五雲会(宝生能楽堂)にて、能『小袖曽我』を勤めます。
曽我十郎・五郎兄弟が、父の敵討ちをするにあたって母を訪ね、弟五郎の勘当を解き、兄弟連れ立って母の御前で勇ましく舞を舞います。
「相舞(あいまい)」と言って、2人で舞台を半分ずつ使って同じ舞を舞うのですが、宝生流は特に『小袖曽我』の「男舞(おとこまい。笛・小鼓・大鼓のみで奏する激しく、勇壮な舞)」を、複雑に面白く作ってあります。
足拍子を交互に踏んだり、舞台をただ半分ずつ使うのではなく、興に乗ってくるうちに、いつの間にか2人の位置が入れ替わり、舞の終盤でまたいつの間にか元に戻ります。
一度見ただけでは、おそらくどのように入れ替わったか、お分かりにならないと思います。分かる方は、動体視力が大変優れている方だと思います。ご自分の動体視力を試してみて下さい。
私と相舞を舞う五郎(弟)役は、高橋憲正さん。女泣かせの甘いマスクで、観る者を魅了することでしょう。
内弟子修業で苦楽を共にした仲間の1人で、相手の出方はお互いよく解っていますが、あえて、先輩の私に追随しないよう、注文を付けてあります。
他の曲にも様々な相舞がありますが、「よく合っていたよ」と言われて喜んだ時期もありました。
しかしこの曲は、光と影のようにぴったりと合うことは要求していないと考えます。
制限された中で、思う存分お互いの力・個性・役柄を出せたらと思います。
能『小袖曽我』
十郎 和久荘太郎・五郎 高橋憲正・母 東川尚史・トモ 佐野弘宜・団三郎 金森隆晋・鬼王 藤井秋雅
能にしては、芝居がかっていて、初めて能を見る方でも退屈せずに楽しんでご覧になれることでしょう。
ぜひお運びいただきますよう、お願い申し上げます。
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おめでとう!
今日は、我がことのように嬉しいことがありました。
でも、良いことでも言わない方が良い世の中のようなので、内容は言いません。
しかし声を大にして叫びます。
「おめでとう!」と。
君は困難な道のりを歩み始めたが、好きなことを生業に出来る君の未来は明るい!
それは僕の歩んでいる道でもあるから。
お金なんて関係ない!
理想高く生きてくれ!
以上、送る言葉でした。
3月18日(日)名古屋宝生会定式能
次の日曜日(3月18日)、名古屋能楽堂にて「名古屋宝生会定式能」が催されます。
能『玉葛』シテ 竹内澄子
狂言『井杭』井上靖浩、井上蒼大、佐藤融
仕舞『氷室』内藤飛能、『花月キリ』衣斐愛
能『国栖』シテ 辰巳満次郎、子方 片桐賢、姥 辰巳大二郎、天女 辰巳和磨
私は、仕舞の地謡と、能『国栖』の後見です。
今回の名古屋宝生会定式能は、年4回のうちの第2回。
能『玉葛』の地謡は女性が勤めます(地頭 倉本雅)。
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ガンQ
本日凜太郎の花見稚児、無事済みましたので、ごほうびに例の「ガンQ」をあげました。
凜太郎によると、大きな眼球に見える不気味な部分は、実は口だそうで、良く見ると、目は上部の角のような部分にチョコンとついています。
更に良く見ると、足にも目がたくさん!
見ているだけで吐き気をもよおします。
次回、凜太郎の舞台は、5月26日(土)涌宝会大会(矢来能楽堂)にて、仕舞『西王母』です。
眼球
明後日3月11日(日)、凜太郎は『鞍馬天狗』の花見稚児を勤めます(月並能 宝生能楽堂) シテ・高橋章で「白頭」の小書付。牛若丸が高橋希・花見が水上達・凜太郎・野月惺太・鶴田航己。
(野月惺太君(4歳)は初舞台!おめでとう!かわいい!)
本日は、その申し合わせ。何とか無事やってくれました。
これで凜太郎のお役もやっと一段落。2月の『善知鳥』『西王母』から『鞍馬天狗』と続いていますので、体調管理に神経を使います(妻が)。
3番とも謡のない曲ですからまだ良いとしても、成長するに従って謡のあるもっと難しいお役を連続して頂戴することも、今後は多分出てくるでしょうから、今のうちに基礎をしっかり身につけておかなければなりません。
写真は、良くできたらごほうびにと用意してあるウルトラ怪獣の「ガンQ」。
最近の子供はこんな気持ち悪いもの、どうして喜ぶんだろう。
ひな祭り
「灯りをつけましょ ぼんぼりに」
で始まる、ひな祭りの唄の2番、
「お内裏さまとおひな様」
という表現は間違いで、正しくは「雄雛」と「雌雛」だそうですね。雄雛・雌雛二対で「内裏雛」。
また、3番の「赤い顔の右大臣」は「左大臣」の間違い。
でもそんな間違いはどうでもよく、広く長く唄われていることに価値があります。
ところで、昔の唄は旋律が単純で覚えやすく、後世に残っていくのもわかる気がします。
文部省唱歌に取り入れて、学校で唄われるような曲は、皆旋律が単純で、歌詞もきれいな七五調が多いようです(最近はわかりませんが)。
演歌・民謡・詩吟・長唄・謡曲の類も、それぞれの分野内で言うと、基本的な旋律や、使っている音階は実は限られていて、そのパターンを入れ替えてバリエーションを増やしているだけです。
それ故に、レパートリーが増えれば増えるほど、似通ってきて覚えにくい(紛らわしい)ということが出てきます。
それに比べて、最近の歌謡曲は言葉と旋律・リズムの当てはめが複雑で、何度か聞いただけではとても覚えられません(私だけ?)。
子供のアニメでさえ、拍またぎの文字を詰め込んだ主題歌になっていて、お父さんは全くついていけません。
しかし今の子供はさすが、生まれた時から複雑な音楽に慣れ親しんでいるので、ラップ調の歌詞の詰め込みでも、自然と身に付けてしまいます。
まあ、だからカラオケが苦手です。
「能楽師だからカラオケも上手じゃなきゃおかしい」
という人がいますが、はたしてそうでしょうか。
第一発声が違います。どうしても長年の訓練の結果、大きな声を出すと謡曲風になってしまうので恥づかしいのです。
新曲を皆さんよく歌えるものだと感心します。
カラオケで歌を勧められて、古い歌を歌えば、なんだか場にそぐわない時もあるし(かと言って、古い歌もそんなに知らないし)。
私の高校時代がカラオケボックス全盛で、その後長く流行っていましたが、最近はカラオケに連れていかれることも少なくなりました。おかげで心を平静に保てます。
飲んでいる席では、人とお話しをするのが好き!
着付け教室
今日は、自宅・飛鳥舞台にて、涌宝会会員希望者の『着付け教室』を開催しました。
(ああ、やはり写真を撮り忘れた。今日は開始前に「忘れずとりましょう」と言ってあったのに。ブログに載せようと思ったのに。)
帯と袴を中心に、1時間半。カメラ・ビデオ撮影も自由。今度の5月26日(土)涌宝会大会に向けて、懸命に覚えようと努力して、大体皆さん一通り着られるようになりました。
袴の畳み方、バッグで持ち歩く場合の収納の仕方もマスターしました。
着物・袴の着付けは、なかなかコツが要るもの。年に1・2回の発表会では、玄人の先生が着付けを手伝ってくれますから、到底覚えられるわけがありません。
今後も、ご希望があれば開催していきたいと思います。
終了後、ティーパーティー(これが眼目)。新しいお弟子さんも皆打ち解けて、楽しい午後を過ごしました。