花見稚児
本日、五雲会(宝生能楽堂)にて、『鞍馬天狗』の花見稚児を息子・凜太郎(4歳)がなんとか無事勤めました。
昨年1月に同じ役で初舞台を踏ませていただいて以来ですが、少しだけ成長したのがわかりました。
平家のお稚児さんの中の一人で、ただ出て帰ってくるだけの役ですが、師匠また父親としては、自分の舞台よりも緊張します。
妻は母親として、本番まで絶対に怪我をしたり、風邪をひかせるわけにいきませんので、家族一丸となって、ひとつの舞台の一部を作りあげるような感じです。
殊に今回は、私自身も地謡で同じ舞台に立ち、しかも、子方達が舞台に入って来て、ちょうど親子で対面する形になり、ちょっと不思議な感じ。
また「そっくり」と言われるんだろうな。暑がりで、親子揃って顔が紅潮するのが特に恥ずかしい。
子供の稽古は、今後もっと難しいお役を頂戴して更に実感していくことでしょうが、飴と鞭のバランスがとても難しい。
厳しいばかりでは、嫌いになってしまうし、いいよいいよではものにならない。
今まで宝生流でも、名子方を幾人か見てきていますが、名伯楽がよく調教したものだと思います。
芸の厳しさを仕込むのはもちろんですが、子供のうちに、能の舞台に出ることは「楽しい」ことだと印象付けることが大事だと考えます。好きなことに対しては、ある時期がくると自分で興味を持って進んで学んで、伸び率が高くなることを体験で知っているからです。
玄人として舞台を「楽しい」と考えることには賛否両論ありますが、お客様に楽しく、気持ちよくなっていただくためには、いやいややっているものはお見せしてはいけない。気持ちよくなり過ぎて、「俺が俺が」というのを見せられるのも不快ですが。
飴と鞭然り、何事もバランスですかね。
親子共々、今後とも厳しくも温かく見守っていただけたらありがたく思います。
凜太郎の舞台、次回は、7月23日(土)涌宝会大会(矢来能楽堂)にて、『猩々』の仕舞の予定です。