甲野先生

今日は、名古屋在住の衣斐愛師の同門会「つぼみ会」でした。第7回とのこと、能『葵上』他、舞囃子など多数の盛大な会。
ご令嬢の侑ちゃんと怜ちゃんもしっかりと舞台を勤め、名古屋の宝生流も楽しみです。
愛さんは、私にとっては東京芸大の1学年先輩で、内藤飛能さんと私の3人で、若手の勉強会「名古屋青雲会」で切磋琢磨し、定期能の「名古屋宝生会」では、より良い舞台を作りあげようとしている仲間なのです。
子育て・家事・お弟子さんのお稽古・そして自らの修業を全て成り立たせている愛さんは、女性能楽師にとっても憧れの的でしょう。
それでいて慢心も無く、謙虚な彼女は、誰もが応援したくなります。
さて、パーティー終了後、名古屋駅にて帰途につこうとしたら、古武道家の甲野善紀先生に遭遇!昨日、宿泊のホテルロビーにてお目にかかり、遠慮も無く声をかけさせて頂いたばかり。何というご縁。
私は、この方を心の師匠として尊敬しています。今回初めてお目にかかり、2日続いて少しの時間を頂戴してお話ができたこと、大変感激しました。
私も若年にて古武道の経験があり、能の動きと古武道の共通点(というより、同じといっても過言ではない)を認識しておりますので、甲野先生の著作は多数拝読して、少しでも師の自然体に近づければと日々模索しています。
師の言語である、「ねじれ」や「居つき」が起きないことが能にとって重要と考えます。
想像通りの自然体。お話をしながら、いつこの人に切りかかろうか隙を伺いましたが(もちろんシュミレーション)、あまりの自然体に気圧されました。
もし私が武道の道を進んでいたら、この人を負かすことを大きな目標にしたでしょう。
2日連続でのご縁、甲野先生も驚かれていました。


宝塚

昨日、宝塚デビューを果たしました。ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』。
全くの白紙でしたが、連れていって下さった方のお陰で、大変楽しめました。能を初めてご覧になる方の心境が少しわかりました。見たくてもなかなか自分でチケットを取る勇気が出ませんね。
シテ(主演)の大空祐飛さん、文句なしに素敵。惚れ惚れします。男より男っぽい。
ワキ(相手役)の野々すみ花さんは、小柄で可憐。役の為に髪をバッサリと伺い、役者としての気概十分、さすが。
ツレ(準主演)の蘭寿とむさんのダンスが素晴らしい!闘牛士の役がいかにもハマって、色香が漂います。
他にも、寿つかささんなどの脇を固める役者さん達の実力とチームプレーに感心します(当然のことなのでしょうが)。
世の女性が(男性も)はまるのがよくわかりました。
後半のショーがまた良かった!派手ですが、伝統を感じました。相当な稽古量でしょう。これらを一ヶ月間上演するのだから、大変な体力・精神力だと察します。
能の表現方法とは対極的かもしれませんが、これもまた良し。きっと近々参ります(ハマったらどうしよう)。


湯浅景介さん

信濃町の文学座アトリエにて、文学座研修生卒業公演『キル』(脚本・野田秀樹、演出・小林勝也)を観てきました。
イマダ/蒼い狼役の湯浅景介さん目当て。長身の美男子で、通る良い声と、姿形の良さ。
それもそのはず、彼は飛鳥舞台で能(仕舞・謡)の稽古もしています。
涌宝会(ゆうほうかい・私の主宰するお弟子さんの会)のお弟子さん方も、応援に駆け付けました。
役者さんだけあって、謡と舞の飲み込みもとても早く、今後も能の稽古を続けて、確立された一つの芸の基礎を持つと、骨格がしっかりして舞台の自信にも繋がるのではと考えます。
先が楽しみで、ぜひ良い芝居を見せて欲しいと思います。
今日の『キル』は、正直言って良くわかりませんでしたが、何だか面白かった。若い役者さん達のエネルギーを感じました。
この「良くわからないけど何だか面白い」というのが、良いですね。
今の世の中、何でも白黒つけてわかりやすくし過ぎるし、皆わかろうと頑張り過ぎるような気がします。
「頭で」わかろうとするから、少しでもわからないと拒否反応を示す。
展覧会で絵をろくに見ずに脇の解説を読むようなものですね。
能も然り。感じていただけたらと。
『キル』は、時間と空間の処理が、能の手法を連想させました。芝居小屋風の文学座アトリエの、緞帳や大道具が無いという、能舞台と同じ条件の舞台での必然でしょうか。
観客の想像に委ねなければならないわけです。
『邯鄲』の時空を越えた夢と現実の行き来、また、『黒塚』の作物などにも見られる空間の処理。
能が前衛的と言われる所以です。
台詞も、言葉遊びともとれる洒落の連続。七五調・古語でないだけで能も同じ(掛詞・縁語)です。
ただ、早口で、脳みそが掻き交ぜられている気がしました。「頭で」考える間を作らせないためかも(穿ち過ぎ?)。
能は逆に一文字ずつに節がついて、母音が出て聞き取りづらい面もありますが、旋律を楽しんでいただく為ですから許してくださいね。
実は同日、宝塚デビューを果たしました。能の表現とは対極にあるような宝塚。大変楽しみました。また後日。


大正大学茶道部

 自宅舞台と明治通りを挟んだ真向かいに、「大正大学」があります。
元は「宗教大学」と称したそうで、4宗派の合同で大正時代に作られた大学とのこと。
昨年10月にこの地に住まいして以来、このような素晴らしい大学が目の前にあることをご縁と思い、何とかこの大学に宝生流能楽のサークルを作れないかと妄想をしたことが始まりでした。
縁あって、この学校の講師で、茶道部をもご指導なさる霜村先生がご懇意にしてくださり、本日自宅の飛鳥舞台にて、学生さん対象のワークショップを開催いたしました。
昨日ご紹介いたしました、2月19日(土)五雲会の『鞍馬天狗』をご鑑賞いただくための事前講座。13名の学生さんと先生がご清聴いただきました。
「能」自体の成り立ち、『鞍馬天狗』の実演を交えたストーリー、また、『鞍馬天狗』の一節を謡う体験、能舞台にての足の運びの体験。
学生さんが可愛い!などと思うのは、私がそれなりに年を経てきたからでしょうか。
いえ、大正大学で、茶道を稽古しようという、志のある若者が集まったからです。
茶道と能の共通点をお話しするにつれて、私自身も、ああ、そうだったのか、と確認する作業になり、やり甲斐がありました。私にとっても、大変貴重な一日となりました。
「型」・「残心」・「一期一会」・「腰」・「臍下丹田」など。すべての日本文化はここに集約されます。
大正大学の学生さん、学校帰りにうちの舞台に立ち寄って、能の稽古をしましょう!


鞍馬天狗(2月19日五雲会)

 来る2月19日(土)、宝生能楽堂の五雲会のトメ『鞍馬天狗』(シテ 水上優)にて、息子の凜太郎が花見稚児で出演いたします。私は地謡です。
23.2五雲会番組
花見稚児
写真は、昨年1月月並能にての初舞台の様子。前(右)から8番目の一番小さいのが凜太郎(当時3歳)です。前後のお兄ちゃんに助けられて、なんとか無事勤めました。
この時は、牛若丸を入れて総勢9名の華やかな舞台。長老も、この人数はいまだかつて見たことがないと。
今回は少し減りまして、6人の子方。昨年と同じく牛若丸の波吉敏信くんを筆頭に、山内昌生くん、高橋希くん、水上達くん、凜太郎、鶴田航己くん。
簡単な役だから、とか、一度やったことがあるから、ということで気を抜かずに、皆無事に勤めてほしいと思います。
正午開演で、『鞍馬天狗』は5時過ぎの予定。チケットは、5,000円(学生2,500円)。当ホームページにお問い合わせください。


老いの才覚

曽野綾子さんの「老いの才覚」を読みました。話題作ですが、素晴らしい本ですね。曽野さんの人柄が溢れ出ています。
文中にも登場する、三浦海岸の別荘には、縁有って私もお邪魔したことがあり、お食事をいただきながら間近でお人柄に触れ、その後本屋でお名前をお見かけする度にいつも気になる存在でした。
先代宝生流宗家・英照先生が、三浦朱門・曽野綾子ご夫妻と、雑誌の企画で対談することになり、当時内弟子だった私が運転でお供したのです。
海岸に面した広大な自然のお庭では、三浦の温暖な気候に適したキウイフルーツなどの果物を育てていらしたのが印象的でした。
折に触れてその別荘に滞在なさるようでした。
著書は、本来私のような年代に書かれた物ではないと思いますが、気持ちが良いほどはっきりと、人のあるべき姿が書かれていました。
ご年配ばかりではなく、若者の心にも響くでしょう。
いやしかし、私のお弟子さん達には、この本の内容を実践できている方がなんと多いことか、と改めて噛み締めました。
涌宝会のお弟子さんの内、半分以上は私の親世代(もしくは上)です。能を指導はいたしますが、所詮は人生の大先輩。いつも逆に教わることばかりです。
「実るほど頭を垂れる稲穂」を想います。


きゅうこさん

当ホームページの、「お稽古のご案内」のデザインが新しくなりました。ぜひご覧ください!
鳥獣戯画風のうさぎさんが、能舞台で稽古をしています。紋付を着た方が私。もう一羽はお弟子さんです。
また、下の方を見ると、和のお稽古の基本である座礼の挨拶をしているうさぎさんがいます。とても愛らしいですね。
昨年暮に作成した、涌宝会(ゆうほうかい・私のお弟子さんの会)のお稽古のご案内のチラシのデザインを一部使用しました(このチラシを欲しい方は、お問い合わせまでご連絡ください)。
この愛らしいうさぎさんたちは、「きゅうこ」さんという、デザイナーさんの作品です。
きゅうこさんは、学生時代から大阪の石黒実都先生に師事して能の稽古を続けながら、新しい視点で能のグッズを作り出しています。
当ホームページ内リンクより、「きゅうこのお仕事。」をご覧ください。心がなごみます。


王瀧(ちゃんこ鍋)

先日お知らせした、名古屋宝生会定式能があり、能『春日龍神』(内藤飛能)・『源氏供養・舞入』(竹内澄子)の地謡を勤めました。
終了後、名古屋能楽堂近く、明道町交差点の「王瀧(おうたき)」という、ちゃんこ鍋のおいしいお店で打ち上げ、M先生にすっかりご馳走になりました。
「王瀧」は、ちゃんこ鍋を売りにして、こだわった昆布ダシに、たくさんの野菜と、牛・豚・鳥3種の肉を入れ、多彩なダシが出たスープで、締めにラーメンをいただくのが最高。
店内には来店の有名人の写真がたくさん飾ってあります。
美人女将が迎えてくれて、かわいい娘さんがお給仕を頑張って手伝っていて、とても微笑ましい。
何だか、食べ歩きグルメブログの様相を呈してきました。

ところで、次回の名古屋宝生会定式能は、3月20日(日)13時開演、同じく名古屋能楽堂にて、私は能『忠度(ただのり)』のシテを勤めます。文武両道の平家の公達、平忠度が主役で、桜の木を主題とした和歌の風流と、戦の仕方話が同居した、見どころの多い曲です。
他に、能『巻絹』衣斐正宜、仕舞・狂言。
これに先駆けて、当日の鑑賞に役立つワークショップを、3月12日(土)10~11時半、名古屋能楽堂楽屋にて開催いたします。
私自身も、役者としての立場から見た曲の解釈や、実演を交えた解説、また、参加者が装束を着る体験など、能役者にしかできないワークショップを考えておりますので、見巧者の方はもちろんのこと、能が初めての方こそ、ぜひお越しいただきたいと思います。
どうぞ、カレンダーに書き込んで、今からご予定下さいませ。


セルリアンタワー能楽堂

今日は、渋谷の東急セルリアンタワー能楽堂にて、『楊貴妃』(武田孝史師)・『弱法師』(渡邊荀之助師)があり、地謡と後見を勤めてきました。
このセルリアンタワーホテル、意外と知られていないようですが、地下1階に能楽堂があります。見所(けんしょ・客席)の収容人数は200人程度で小さめですが、金田中のお食事をいただきながら観能することもできて、綺麗な良い舞台です。
この舞台で、本年8月5日(金)20時開演のNOH-AGE(宝生和英宗家主宰)という催しにおいて、能『鵺(ぬえ)』のシテを勤めさせていただきます。詳細がはっきりしましたら、また改めてお知らせいたします!
実は6年前に、このホテルで結婚式と披露宴をいたしましたので、私にとっては思い入れの深い場所なのです。


NHKFM『葵上』(1月23日)

明後日1月23日(日)は、名古屋宝生会定式能ですが、その朝に、ラジオ・NHKFM(7:15~8:00)にて以下の放送がありますので、お知らせいたします。
 素謡「葵上」
  出演
   シテと地謡:   金井雄資
   ワキと地謡:   佐野登
   ツレと地謡:   小倉健太郎
   ワキツレと地謡:和久荘太郎
   地謡:       金森隆晋
 素謡「養老」 (後シテの「有難や治まる御代のしるしとて」から最後まで)
  出演
   シテと地謡:佐野登
   地謡:    小倉健太郎・和久荘太郎・金森隆晋
早朝ですが、お聴きいただけたらありがたく思います。
私はその時間は名古屋行きの新幹線に乗っていますので、聴けませんが。