能『経政』を舞います(10月8日土曜日 三保羽衣薪能)

来月10月8日(土)「三保羽衣薪能」にて、能『経政』を舞います(詳細は上記チラシをクリックしてご覧ください)。

 

もう一番は佐野登師の能『羽衣』。羽衣の正に本拠の土地で『羽衣』が上演されるという、何とも洒脱な趣向。会場のそばには「羽衣の松」という、天女が脱いだ衣を掛けたという、羽衣伝説にちなんだ一本の大きな松があります。

 

私は能『経政』は初役ではなく、何度か舞っていますが、一番思い出深いのは、東京藝術大学在学中の卒業演奏(東京芸大の音楽学部は「卒論」ではなく「卒演」で単位を取ります)。芸大の中に通称「能ホール(第四ホール)」という能舞台があり、そこでお客様をお入れして能『経政』を舞いました。お客様のすぐ後方には錚々たる顔ぶれの試験官が6人ほど並んでいます。緊張の中、私にとってこれが「初シテ」でした。しかし、公の初シテとして芸歴には載りません。宝生会が主催する催しで舞うものが本当の「初シテ」として芸歴となります。

 

平経政(たいらのつねまさ)がシテ。有名な敦盛の兄にあたり、琵琶の名手として名高く、法親王から「青山(せいざん)」という名器をお借りして常にそばに置いて演奏していましたが、一ノ谷の戦いに参戦するために、京都・仁和寺に預けおきました。

戦死した経政を弔うために、行慶僧都が管弦講(かんげんこう。音楽葬)を取りしきる、というところから舞台が始まります。

仄暗いなか、経政の幽霊が現れ、ありし日の花鳥風月に親しんだ日々を懐かしみます。

最後は、修羅道に攻め立てられる自分の姿を恥じて、灯火を吹き消して消え失せます。

 

東京方面・名古屋方面ともに日帰り可能な時間設定だそうです。

ぜひご来場ください!