ステージパパ
昨日、月並能にて凜太郎が『三井寺』の子方を何とか無事勤めました。
シテは、金森秀祥師。丁寧なご指導を頂きました。
1時間以上座りっぱなしで、最後に謡がたくさんありますので、幼稚園児にはなかなか大変な役柄で、1年以上前に家元からお役を頂戴した時は、まだ早いかもとは思いましたが、挑戦できるお役を頂戴したと思って、他のお役と並行しながら、時間をかけて稽古してまいりました。
こんな時に限って、本番数日前から、右足にケガと水いぼが!右ひざを下にして、左膝を立てて長時間座るのに。
夫婦で「たいしたことない」と本人に言い聞かせて(思い込ませて)、無理矢理勤めさせました。
子供には本当にやきもきさせられます。自分のことならば、無理が通るしどうにでもなりますが。
これからも、家族での(心の)戦いは、子方を卒業する中学生くらいまで、何年も続くのでしょう。
次回は、今月9月30日(日)水道橋・宝生能楽堂における「宝隆会」(田崎隆三師同門会)にて、『鶴亀・曲入』の子方(亀)を勤めます。
先日8月2日のMOA美術館薪能と同じく、水上達君とのコンビ再結成。また稽古が始まります。
それが済むと、来月10月20日(土)には、五雲会にて『花筐』(シテ 小倉健太郎師)の子方。
私、自分の舞台も勤めながら、最近は、ステージパパもしています。
9月15日(土)五雲会『龍田』 2
(続き)
能の後半、シテの龍田姫が「神楽」を舞います。
宝生流では、シテが神楽を舞うのは、『龍田』『三輪』『巻絹』の3番のみ。
変わったところでは、『葛城』に「神楽」という小書(特殊演出)が付くと常の「序之舞」が「五段神楽(惣神楽とも)」に変わります(本年12月1日「満次郎の会」にて、辰巳満次郎師がこの演出で舞いますので乞うご期待)。
また、『絵馬』のツレ2人が相舞で「二段神楽」(神楽の省略形)を舞いますが、これは宝生流独自の演出。
「神楽」、私は舞囃子としては度々勤めておりますが、能としては初めて。
実際に扇を弊に持ち替えて左右に振り上げ、舞います。
神様の曲を勤めるのは、恐れ多い気持ちもありますが、『高砂』『養老』『加茂』などと同様、舞っていて清々しい気持ちになります。
『龍田』の神は女神で、しかも紅葉がご神体、すっきりとして尚且つ風情がある。
ストーリーでは『三輪』にかないませんが、三番目物の雰囲気も少しあり、かなりやりがいのある曲です。
先日の新作能『散尊』のデリラ役に引き続き、この『龍田』に至るまで、この夏は特に日焼けしないように気を使いました。女子かと思うくらい。
日焼けに関しては、色々な考えの方がいらっしゃいますが、ご覧になるお客様がどうお感じになるか、を常に考えたいと思います。
『龍田』の他に、『通盛(みちもり)』渡邊荀之助、『班女(はんじょ)』水上優、『是界(ぜがい)』東川尚史、他狂言2番。
入場料5,000円(学生2,500円)
お問い合わせ・チケット購入はこちらまで。
9月15日(土)五雲会『龍田』 1
来る9月15日(土)正午より、水道橋・宝生能楽堂の五雲会において、能『龍田』のシテを勤めます。
古来より紅葉の名所として名高い奈良の龍田川。
秋も終わりに近づき、薄氷が張った川面に紅葉が閉ざされて、さながら錦のよう。
高僧(ワキ)が龍田明神参詣の為にこの川を渡ろうとすると、ひとりの巫子(かんなぎ・前シテ)が呼び止め、
「この川を渡ると神と人との中が絶えてしまう」
と忠告します。
僧は、
「龍田川 紅葉乱れて流るめり 渡らば錦 中や絶えなん」
という、古の帝の和歌を思い出しますが、今はもう紅葉の盛りも過ぎて、川面には薄氷が張っているので許してくれ、と渡ろうとします。
巫子は、
「龍田川 紅葉を閉づる薄氷 渡らばそれも 中や絶えなん」
という、藤原家隆の和歌を引いて、更に僧を制止し、別の道から龍田明神に案内します。
御神木の紅葉を見せなどして、なおも境内を案内するうちに、今まではただの巫子と見えた女性が、
「我は真はこの神の 龍田姫は我なり」
と名乗るやいなや、身体から光を放ち、紅の袖をうちかついで社壇の扉を押し開き、御殿に入ってしまいます(中入)。
社殿の前で仮寝して神のお告げを待っていると、御殿の中から龍田姫の声が聞こえ、神々しい姿(後シテ)を現します。
古来より和歌に詠まれた龍田山・龍田川を愛でて舞い、弊を振り上げて夜神楽を舞い、紅葉葉が散り飛ぶ中、山河草木国土をおさめて、龍田姫は昇天します。
(続く)
新作能の意義 2
(つづき)
私は別に新作能推進派ではありませんが、このような経験を若い内にさせていただけることは、滅多にない大変幸せなことです。
普段、能一曲を作り上げるのに、独りで稽古、稽古、のみでいくと、どうしても「技術」を職人的に突き詰めることばかり考えて、視野が狭くなるのは否めません。
過去に拝見した先達の舞台を思い返したり、文献に触れたりして視野を広げる努力はしますが、なぜ此処の型はこう動くのか、どうしてこう謡うのか、というところまでは、あまり考えが及びません。
しかし、今回の経験によって少し目が開かされ、古典の既存の能の作られていく過程や、年月により無駄が削ぎ落とされていく過程、また、作者の意図や役柄の立場・全体のバランスなどに、改めて考えをめぐらすことができそうです。
以前は、他流派の新作能をただの「話題集め」くらいに考えておりましたが、満次郎師演出の『マクベス』『六条』そして今回の『散尊』などの、きちんとした「能の演出」に則った新作能に参加するにしたがって、その意義を感じるようになってきました。
お客様には楽しみにしていただきたいと思いますが、私自身も当日が楽しみです!
新作能の意義 1
8月21日(火)国立能楽堂にての、新作能『散尊(サムソン)』の稽古が、順調に進んでいます。
当ブログ(5月20日)でもお知らせした通り、シテのサムソンは辰巳満次郎師、通常の能ではワキに相当する役柄のミルトンを金井雄資師、ツレのデリラを私が勤めます。
先日の下申し合わせでは、長々のセリフをスラスラと謡いこなした金井師はさすが。直面(能面をかけない)の盲目という、類例の無い役柄を既に雰囲気たっぷりに作り上げています。
はたまた満次郎師は、ただでさえ常人では考えられないほどの多忙の中、シテとツレの謡と型を、大変面白く作り上げました。
下申し合わせ終了後の、作者や演出家の新しい注文に対しても、的確な面白い演出のアイディアがポンポン飛び出てくる満次郎師の頭の中は、いったいどうなっているのでしょうか。
ところで、私ことデリラは、通常の能の稽古の通り、出来上がった型付(台本・演出書)に従って、作者・演出家の意図を汲み取って演じるのみですが、既存の古典の能と明らかに違うのは、過去に誰一人としてこの役を演じていないということです(当たり前ですが)。
大袈裟に、誤解を恐れずに言うと、何しろ私が世界で初めてこの能のデリラという役を演じるのですから、「手本が無い」という不安はありますが、型付に制約された中で、演技を自由にふくらますことができる面白さがあるように感じます。
(つづく)
8月14日ライブハウスにて
来る8月14日(火)17時半、六本木のライブハウス「スイートベイジル」にて、以下の催しに出演します。
『能楽Lab「能楽・日本むかしがたり」―羽衣―』
【出演】
舞:佐野登
謡:和久荘太郎
笛:一噌幸弘
小鼓:森澤勇司
語り:田村亮
子ども~おとなまで 伝統の先っぽを体感するSummer Live!!
読み聞かせエンターテイメント、日本むかしばなしを能楽の世界からご招待。日本再発見の極上ライブ登場!!
いつもは大人の空間のスイートベイジルが、夏休み特別企画で子どもも参加できるライブを実施!
真夏の夜を和風ライブでお過ごしください。
「羽衣」の物語を能と語りと音楽のコラボレーションでお届けします。
まるわかりではない、わかりやすさ、
親切すぎない、親切さ、
知らなかった「能」の印象が変わるかも?
日本の伝統の世界への入口、能楽Labのニューラインナップ、これを機会にぜひ、体感してください。
チャージ料金
大人:4,000円
子ども:2,000円(3歳~中学生)
ドアオープン:16:30
スタート:17:30
地下鉄日比谷線・大江戸線「六本木駅」下車3番出口を出て右方向に進み、アマンドの角を右折。芋洗坂を約50m下った右手。
私も、このようなコラボはほぼ初めての体験で、どのようなものになるか、楽しみにしております。
大人ひとりでも、お子様同伴でも楽しめる内容になりそうです。
ぜひお運びください!
※チケットご希望の方はこちらまで。
MOA美術館薪能 2
(つづき)
達君のお父さんは水上優(ゆたか)さんで、同じく私より2歳年上。私は子方はやっておりませんので、10代後半の宗家の内弟子時代からの20年来のお付き合いで、同じ釜の飯を食った仲間として、仲良くさせていただいています。
その息子2人がまた同じ年かさで、これから一生共に切磋琢磨していく、という、この伝承の面白さが能の魅力のひとつでもあります。
私には家柄はありませんが、自分が先達から受け継いだものを間違わずに後世に伝承していく一端を担い始めたことに、責任を感じます。
ところで、私は子方をやっておりませんが、実は約20年前に、同じMOA美術館薪能にて、同じ亀役を勤めております。
鶴は同い年の小林晋也さん。
子方の場合は直面(ひためん・能面をかけない)に鶴と亀それぞれの冠を戴きますが、当時2人とも10代後半で大人の体型ですので、鶴は小面(こおもて・初々しい女性の面)、亀は邯鄲男(かんたんおとこ・『邯鄲』専用の若い男の面)をかけて勤めました。
この時のシテは、先代宝生流宗家・宝生英照師(故辰巳孝師の病気療養による代演)。
今回の鶴亀は、私は地謡で出演。ハラハラドキドキイライラ。
もう一番は『黒塚・白頭(はくとう)』(シテ・辰巳満次郎)。
これも文句なしの一番になることでしょう。
詳細は、MOA美術館ホームページ。
雨天の場合、MOA美術館内能楽堂に。演能中に雨の場合は中止。
凜太郎にてるてる坊主を作らせます。
MOA美術館薪能 1
8月2日(木)18時開演、MOA美術館薪能にて、凜太郎が能『鶴亀・曲入』(シテ・小倉敏克)の亀を勤めます。
時の皇帝(シテ。唐の玄宗皇帝と目される)の治める御代を寿いで、長寿の象徴である鶴と亀が舞を舞うと、皇帝も興に乗って、めでたい春を祝い舞を舞う、という極単純な曲で、ストーリーはほぼ存在せず、めでたさを表現することに終始します。
今回は「曲入(くせいり)」という小書(特殊演出)が付き、通常の『鶴亀』には無い長い詞章(クリ・サシ・クセ)が挿入され、シテはクセで舞を舞います。
このクセは、現行曲では無い『巴園(はえん)』という曲中のクセをそのまま挿入したもので、宝生流では「蘭曲(らんぎょく)」という重い扱いになっています。
このクセの終わりにかけて鶴と亀が登場します。
この鶴と亀役、宝生流では子方が破之舞(はのまい)を相舞(あいまい・シンクロ)にて勤めるのが現在の主流で、皇帝の荘重な舞の前座として、誠に可愛らしいものです。
相手役(鶴)は、水上達君。凜太郎より2歳年上で、普段も仲の良い2人です。
凜太郎は稽古で毎回会えるのが楽しみのようです。
(つづく)
舞のワークショップ
まだ先の話ですが、9月14日(金)午後6時半~8時半、国立能楽堂内2階・研修能舞台にて、
「楽しもう!能の世界 舞の世界を知ろう」
という催しを、国立能楽堂の初めての企画で、一噌流笛方の小野寺竜一さんと私の2人で、ワークショップをいたします。
これは、9月21日(金)午後6時半開演の定例公演、狂言『口真似』と宝生流能『羽衣 盤渉(バンシキ)』(シテ・金井雄資)の鑑賞に先駆けて、曲の解説というよりも、能の囃子事の「舞」について、実演を交えつつ、初心者向けに解説いたします。
募集人数は50名、参加費は3,100円で、21日の定例公演の鑑賞料金(脇正面)。ようするに、公演当日券を購入したのと同じ料金で、舞のワークショップにも参加出来るということ。
但し、往復ハガキによるお申し込みが必要です(応募多数の場合は抽選)。締め切りは7月23日(月)必着。詳細は国立能楽堂ホームページにて発表していますので、ご一読下さい。
明日名古屋能楽堂・能三昧
明日6月9日(土)は、名古屋能楽堂にて3つの催しに関わっております。
○若鯱研究発表会(10時~12時過ぎ)
○若鯱能(13時~17時)
○名古屋宝生会ワークショップ(18時~19時半)
無駄が無いですね。
若鯱研究会は、玄人の卵として名古屋養成会に所属する若い子達の発表の機会。
宝生流は、舞囃子『放下僧』江渕陽三・『田村』小林陸、仕舞『鞍馬天狗』佐藤健太朗の出演。
私は東川尚史・内藤飛能と共に地謡を勤めます。
入場無料ですから、ぜひお越し下さい。
若鯱能は、若手玄人の異流合同の催し(入場料 一般2,000円、中学生以上の学生1,000円、小学生500円)。
宝生流は、能『野守』(衣斐愛)。若鯱研究会に引き続き、私も地謡(地頭)を勤めます。
他に喜多流能『経政』、金剛流能『桜川』、和泉流狂言『寝音曲』。
そして、名古屋宝生会ワークショップは、今月6月17日(日)名古屋宝生会定式能(能『杜若』宝生和英・『是界』和久荘太郎)鑑賞に役立つ事前講座。
『杜若』の解説を内藤飛能、『是界』の解説を私がいたします。
そして、今回は久しぶりに、装束着けの体験をしていただきます!
詳細はご来場になってのお楽しみに。
こちらは、入場料1,000円です(年間チケットをご持参の方は無料)。
朝から全部参加する旨表明なさっている方も幾人かいらっしゃいます。
ご都合のよろしい時間だけでも、ぜひお運び下さいませ!