9月15日(土)五雲会『龍田』 1

来る9月15日(土)正午より、水道橋・宝生能楽堂の五雲会において、能『龍田』のシテを勤めます。
古来より紅葉の名所として名高い奈良の龍田川。
秋も終わりに近づき、薄氷が張った川面に紅葉が閉ざされて、さながら錦のよう。
高僧(ワキ)が龍田明神参詣の為にこの川を渡ろうとすると、ひとりの巫子(かんなぎ・前シテ)が呼び止め、
「この川を渡ると神と人との中が絶えてしまう」
と忠告します。
僧は、
「龍田川 紅葉乱れて流るめり 渡らば錦 中や絶えなん」
という、古の帝の和歌を思い出しますが、今はもう紅葉の盛りも過ぎて、川面には薄氷が張っているので許してくれ、と渡ろうとします。
巫子は、
「龍田川 紅葉を閉づる薄氷 渡らばそれも 中や絶えなん」
という、藤原家隆の和歌を引いて、更に僧を制止し、別の道から龍田明神に案内します。
御神木の紅葉を見せなどして、なおも境内を案内するうちに、今まではただの巫子と見えた女性が、
「我は真はこの神の 龍田姫は我なり」
と名乗るやいなや、身体から光を放ち、紅の袖をうちかついで社壇の扉を押し開き、御殿に入ってしまいます(中入)。
社殿の前で仮寝して神のお告げを待っていると、御殿の中から龍田姫の声が聞こえ、神々しい姿(後シテ)を現します。
古来より和歌に詠まれた龍田山・龍田川を愛でて舞い、弊を振り上げて夜神楽を舞い、紅葉葉が散り飛ぶ中、山河草木国土をおさめて、龍田姫は昇天します。
(続く)