平成28年舞台のお知らせ

平成28年の舞台出演予定を当ホームページにアップしました。ご覧ください。

 

来年も、能5番を勤めます。

 ○『土蜘(つちぐも)』 4月16日(土)五雲会(宝生能楽堂)

 ○『舎利(しゃり)』 5月7日(土)豊田市能楽堂普及公演

 ○『歌占(うたうら)』 6月19日(日)名古屋宝生会定式能(名古屋能楽堂)

 ○『海人(あま)』 9月30日(金)ユネスコ記念能(国立能楽堂)

 ○『紅葉狩(もみじがり)』 12月17日(土)五雲会(宝生能楽堂)

 

『歌占』と『海人』は、凜太郎と親子役。昨年の『百萬』以来です。

 

今後も、追加がありましたら随時更新してまいります。

6月20日(土)五雲会『八島』

今週土曜日6月20日、宝生能楽堂にて催される「五雲会」にて、能『八島』のシテを勤めます。

能『八島』
シテ 和久荘太郎
ツレ 藪克徳
ワキ 福王和幸
笛  小野寺竜一
小鼓 船戸昭弘
大鼓 佃良太郎
地謡 金井雄資他

 

修羅物(武士や公達を主役に配した能。二番目物とも)は「負修羅(まけしゅら)」と「勝修羅(かちしゅら)」に分かれ、『八島』は「勝修羅」に分類される、勝ち戦を扱った曲で、シテ(主役)は源義経。

義経は、能の様々な曲に登場しますが、成人した義経がシテとして配されているのは、この『八島』一番のみ。
他は、義経役を子方(『安宅』『摂待』)やツレ(『忠信』)が演じたり、元服前の牛若丸(『鞍馬天狗』『橋弁慶』『烏帽子折』)を、やはり子方が演じます。

勝修羅物3番(他に『箙』『田村』)の中でも、位が高い曲ですから、若いうちにはさせてもらえない(といっても今年41歳)と思っていましたので、光栄に感じ、現時点での力を出し切って、精一杯勤めます。

曲の構成にその「位」が感じられます。前半のツレ(男)とシテ(老人・実は義経)の登場シーンが、脇能(『高砂』『養老』『弓八幡』などの神能)の形式をやや踏襲していて、その後、俗に「宿借り」という、『松風』『絃上』などの位のある曲と同様の形式が続きます。

 老人は、僧を自分の塩屋へ招き入れ、僧の所望によってこの地での合戦の有様を語りますが、『錏引き(しころびき)』という、能『景清』でも語られる、平家方の悪七兵衛景清(あくしちびょうえかげきよ)と、源氏方の三保谷四郎(みほのやのしろう)が力比べをするシーンの語りが聴きどころ。まるで、老人が、武者そのものになったように、仕方話で語ります。

自分が義経の亡霊であることをほのめかして僧の前から消え失せ(中入)、僧が夢うつつになると、義経が在りし日の甲冑姿で現れ、合戦の有様を激しく再現し、最後には春の夜の夢のように明けて消え失せます。

 

 義経・兜
これ、義経が愛用したといわれる兜です。もちろん複製。長男の凜太郎が産まれた時に買ったもので、毎年端午の節句に床の間に飾ります。

 

『八島』の後半、義経の幽霊が戦勝の有様を再現するシーンで、

地謡「潮に映るは」

シテ「兜の星の影」

という謡と共に、強い足拍子を一つ踏みます。
「兜の星」というのは、写真の、黒色と金色で構成された頭頂部に多数埋め込まれた鋲のこと。これが、水面にキラキラ映って光り輝いている爽やかな有様が想像されます。

 

6月20日(土)12時開演、『八島』は12時より。

他に、『歌占』髙橋亘、『杜若』辰巳大二郎、『大江山』東川光夫、狂言2番。

入場料5,000円(学生2,500円)

チケットお求めやお問い合わせはこちらまで。

みなさまお誘い合わせの上、ご来場下さい!

6月6日(土)10周年記念 涌宝会大会

今週土曜日の6月6日、水道橋・宝生能楽堂にて、私の社中発表会・涌宝会の10周年記念大会を催します。涌宝会として初めて、宝生流本拠地での開催。苦節10年、やっと念願が叶いました。

能2番、一調1番、舞囃子15番、独鼓3番、素謡・連吟・仕舞多数。私は、最初に番外一調『東北』を大鼓・亀井広忠氏にお相手願い相勤めます。

以下に能2番の番組を。


〔13時〕
能『加茂』
シテ 神谷恭子
ツレ 佐藤まりな
天女 岡田真理
ワキ 御厨誠吾
ワキツレ 野口能弘・野口琢弘
アイ 高野和憲
笛 藤田次郎
小鼓 大山容子
大鼓 國川純
太鼓 加藤洋輝
後見 影山三池子・和久荘太郎・土屋周子
地謡 辰巳満次郎・山内崇生・野月聡・小倉健太郎・内藤飛能・辰巳和磨・朝倉大輔・渡邊陽介


〔16時10分〕
能『鵜飼』
シテ 森下光
ワキ 宝生欣哉
ワキツレ 大日方寛
アイ 高野和憲
笛 一噌幸弘
小鼓 大倉源次郎
大鼓 亀井忠雄
太鼓 大川典良
後見 宝生和英・和久荘太郎
地謡 大坪喜美雄・辰巳満次郎・佐野登・小倉伸二郎・澤田宏司・辰巳大二郎・金森隆晋・菊池尚希


能『加茂』のシテ、神谷恭子さんは、白百合女子大の能楽サークルで熱心に稽古し、卒業後社会人でのブランクを経て、名古屋の稽古場で私の門を敲いてくれました。
持ち前の集中力と熱心さで、能らしい、強い舞台が期待できそうです。
本後見には、白百合時代の先生、影山三池子師を迎え、文字通りシテの後ろから温かく見守ってくれます。

前ツレの佐藤まりなさんは、名古屋市立名東高校の能楽研究部に3年生から入部して以来稽古を続け、この度初面・装束。緊張していることでしょう。
涌宝会の歴史は、公には10周年と言っていますが、実はお弟子さんの稽古自体は15年ほど前からしています。発表会も、浴衣会・謡初など、内輪の会をその時から続けています。私25歳の内弟子時代、家元の故宝生英照先生からお許しを頂き、名東高校と岡崎の稽古から始めました。その時から稽古しているのが佐藤さんで、現在もご本人はお若いのですが、私の一番古いお弟子さんと言えます。

天女(後ツレ)の岡田真理さんは、愛知教育大学の能楽サークルで佐藤耕司師(名古屋在住職分で、私の元々の師匠)の稽古を受け、佐藤まりなさん同様、15年前に岡崎の稽古を始めた時からのお弟子さん。既に、涌宝会にて能2番(花月・枕慈童)を舞っていて、近年教授嘱託免状も取得したベテランですが、袖を翻すような女性らしい役をまだしたことがないということで、今回、「加茂だけに」白羽の矢を立てました。可愛らしく清々しい天女が期待できます。

能『鵜飼』の森下光さん。この方は、能楽界では流派・玄人・素人問わず有名人です(私よりも・・・)。幼少時から、親御さんやおばあさまに連れられて能楽鑑賞に親しみ、今も能を心の底から愛していて、能の面白さを世の中に広く伝えようとする伝道者で、私のことも(ついでに?)宣伝してくれて、腹心として欠かせぬ存在です。岡田さん同様、近年教授嘱託免状を取得して、稽古年数は驚くほど短いのですが、「立場が人を作る」を実践して、驚異的なスピードで実力を付けて、今回初能・初面・初装束に臨みます。

 

その他にも、ご紹介したい方が大勢います。
ぜひ、当日お運びください。

入場無料、9時半開演、出入り自由です(録音・撮影は禁止)。

番組は、当日受付にてお渡し致します。

5月31日(日)『満仲』(セルリアンタワー能楽堂)

来る5月31日(日)、13時開演、セルリアンタワー能楽堂にて、希曲『満仲(まんじゅう)』が演じられます。

詳細は以下をクリックして下さい。
http://www.ceruleantower.com/nohtheater_kikaku_schedule.html#2015housyou

 

息子の凜太郎が子方の一人、幸寿(こうじゅ)を勤め、私は地謡(後列)。

幸寿は、曲の半ばで父親・藤原仲光(ふじわらのなかみつ)に止む無く殺されてしまう役で、途中切戸口から退場します。主君・多田満仲(ただのまんじゅう)の子供・美女丸(びじょまる)の身代わりとなるのです。

美女丸は、学問の為に寺に預けられましたが、武士としての稽古に明け暮れ、学問を顧みないために、満仲(ツレ)は家来の仲光(シテ)に、美女丸を殺すよう命じます。

 

幸寿が殺された後、美女丸は比叡山延暦寺の高僧・恵心僧都(えしんそうず)にかくまわれますが、後日恵心は美女丸を伴い満仲の御所を訪れ、親子の再会を果たします。
この際、満仲は「幸寿が死んだときになぜお前も一緒にしななかった」と叱責します。すると恵心は、「ここは何を措いても、幸寿の弔いと思い美女丸をお助けなさい」と泣いて懇願します。
それによって、満仲は美女丸を許しますが、この後恵心は仲光に向かって「めでたい折なので、一指し舞を舞いなさい」と、とんでもないことを言います。

 

この一連のやり取りが、この曲の非常に理解に苦しむところで、全てが封建社会の建前や武士の意地であることを汲んでも、許せない、と個人的に(子を持つ親だからこそ)感じるところです。

封建時代の、主君の為には命をも賭す、現代人にはとても理解できない感覚の中で構成されており、悲しい曲です。それゆえ、ちょっと後味が悪い面がありますが、人間の性(さが)のエゴイズムで、人が悲しみに暮れる姿に同情しつつ、客観的に、傍観して演劇を楽しむことが出来るのでしょう。現代の小説やドラマの方が、余程残酷に構成されているかもしれません。「能にしては残酷」、ということでしょうか。

幸寿を殺す表現は、能らしく、露骨には表現しません。シテの仲光が、我が子の幸寿をめくら討ち(目をつぶって斬る)に斬る型をして、太刀を幸寿の前に放り投げ、すぐさま幸寿役の子方は立ち上がり、切戸から退出し、その残った太刀を幸寿の遺骸としてお客様には想像していただきます。

 

ところで、凜太郎は今年12月にも『竹雪(たけのゆき)』という希曲で、舞台上で死ぬ役を勤めます(月並能)。大雪の中、意地悪な継母から庭の竹の雪を払うよういいつけられ、家からは閉め出され、雪に埋もれて遂に死んでしまいます。その表現として、白練(しろねり)という、真っ白な装束を横たわった子方の上に頭から足まですっかり掛けてしまいます。

ところが、こちらの曲は、なんと最後に生き返ります!竹林の七賢人の力により・・・。

能には、本当に色々な曲がありますね。

1月25日(日)名古屋宝生会定式能『三笑』『鉢木』

27.1名宝会表 27.1名宝会裏

来る1月25日(日)、名古屋能楽堂にて、「第59期 第1回 名古屋宝生会定式能」が催されます。

(番組の詳細は、上記画像をクリックすると、拡大画像が出現します)

今回から、従来のワークショップ(事前講座)に代わり、演能当日12時半より能楽師による演目解説を実施いたします。

能の開演は、従来通り13時から。

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能『三笑』シテ 竹内澄子
ツレ 澤田宏司・内藤飛能
笛  大野誠
小鼓 船戸昭弘
大鼓 河村眞之介
太鼓 加藤洋輝
地謡 衣斐正宜他

 

狂言『鶏聟』シテ 野口隆行
アド 松田高義・鹿島俊裕・井上松次郎

 

仕舞
『山姥クセ』衣斐正宜
『大江山』 衣斐愛

 

能『鉢木』シテ 辰巳満次郎
ツレ 内藤飛能
ワキ 飯冨雅介
ワキツレ 橋本宰・椙元正樹
アイ 佐藤友彦・佐藤融・野村信朗・井上蒼大
笛  藤田六郎兵衛
小鼓 後藤嘉津幸
大鼓 河村総一郎
地謡 朝倉俊樹他

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私は、能『三笑』と『鉢木』の地謡を勤めます。

 

入場券料(全自由席) 5,000円(学生券 2,000円)

チケットご購入・お問い合わせは当ホームページ、または名古屋宝生会(電話/FAX)052-882-5600)まで。

鶴役(『鶴亀・曲入』1月11日月並能)

次の日曜日(1月11日)、月並能(宝生能楽堂)『鶴亀・曲入(つるかめ・くせいり)』(シテ・武田孝史)にて、凜太郎が「鶴」役を勤めます。

 

『鶴亀』の子方自体は5回目ですが、今回は初の「鶴」役。「鶴」は年長者が勤めますので、いつもお兄さん相手で「亀」ばかりでした。

と言っても、動き自体は相舞(あいまい)で鶴・亀ともほぼ同じ動き。能の途中から登場し、「破之舞(はのまい)」という短い舞を舞い、この後の皇帝(シテ)の重厚な舞の前座を務めます。

この役は、宝生流は常には子方が勤めますが、他流では大人が面を掛けて勤めることが多いようです。
身びいきかもしれませんが、ここは皇帝の引き立て役ということで、やはり子供が舞う方が可愛くて良いと感じます。

それぞれ、頭に鶴と亀を模した冠を戴いて、その役柄を直接的に表します。これがまたなかなかリアル。一見の価値あり。
意外と重さがあるので、小さい子供には重く感じるかもしれません。
皇帝に対して、鶴と亀が座って礼をする型がありますが、あまり頭を下げると重みで落ちそうでハラハラしますので、ここはあまり下げすぎないように、よく指導する箇所です。

今回お相手の亀役は、私の5歳先輩・野月聡氏のご長男・惺太君。
凜太郎より一つ下の小学一年生で、2人は背丈が同じくらい。バランスが良いと思います。
今日は、家元の最後の稽古で、それぞれご注意を受けました。

申合せはいよいよ明後日金曜日。風邪などひかせられません。

平成27年舞台のお知らせ

当ホームページ内の、【舞台のお知らせ】、本年(平成27年)の凜太郎と私の主な舞台(シテ・ツレ・子方・舞囃子・仕舞)を更新しました。
本年は、私は、能のシテを5番勤めます。

○『敦盛』 3月1日(日)川崎能楽堂定期能(川崎能楽堂)

○『百萬』 3月15日(日)名古屋宝生会定式能(名古屋能楽堂)

○『八島』 6月20日(土)五雲会(宝生能楽堂)

○『融』  9月20日(日)第3回和久荘太郎演能空間(名古屋能楽堂)

○『忠信』 12月19日(土)五雲会(宝生能楽堂)

いずれも初役。心して勤めます。

 

舞台のお知らせ】をご覧いただくと分かりますが、装束を着けて舞台に出る回数は、私よりも凜太郎の方が多いのです。
この他にもいくつかまだ公表できない舞台もあり、月1~2回以上のお役の数です。

今年も、家族ぐるみで子供の体調管理と稽古に気を使いそうです。

9月27日(土)時の花『乱・和合』(東京新聞 26年9月19日朝刊)

東京新聞乱和合記事

来る、9月27日(土)16時開演 時の花(宝生能楽堂)にての、『乱・和合』の取材記事が、東京新聞に掲載されました。

東京では、約30年ぶりの希曲です。次回、いつみられるかわかりません。ぜひご来場ください。

お問い合わせ・チケット購入は、当ホームページまたは、宝生会(03-3811-4843)まで。

乱・和合(9月27日土曜日「時の花」)

乱和合表

乱和合裏

 

来る9月27日(土)16時開演 企画公演「時の花」(宝生能楽堂)にて、『乱・和合(みだれ・わごう)』という希曲を勤めさせていただきます。

「乱」とは、能『猩々(しょうじょう)』の小書(こがき。特殊演出)で、通常は「中之舞(ちゅうのまい)」というポピュラーな演奏で舞を舞いますが、それに代わり「乱」という緩急複雑な舞が挿入され、波の上を歩行する独特の型「乱れ足」を駆使して、海に浮き沈みする酒飲みの妖精「猩々」を面白く表現します。

しかも、宝生流では、曲名も『猩々』から『乱』に変わってしまいます。

今回、その『乱』に更に「和合」という珍しい小書が付きます。

「和合」とは、おそらく「夫婦和合」でしょう。猩々が雌雄登場して、相舞(あいまい。シンクロ)を舞います。
私が「男シテ」、高橋憲正氏が「女シテ」。これを「両シテ」と称して、お互い同格に勤めます。
(ちなみに、両者同装で登場するので、どちらがどちらか、判別が困難かもしれません。小柄な方が私です)

東京・水道橋の宝生能楽堂では、約30年ぶりの上演。大変珍しいものです。

相舞は数多くあれど(『小袖曽我』の十郎・五郎、『鶴亀』の鶴・亀、『祇王』の仏御前・祇王、『嵐山』の木守・勝手、『絵馬』の女神・男神など)、宝生流の『乱・和合』はちょっと特殊。
通常、相舞は、お客様から見て、同じ方向に動いて全く同じ動きをしますが、『乱・和合』は、初めは同じ方向に動いていますが、乱の舞が始まると、お客様から見て鏡写し(線対称)に動きます。

しかも、途中複雑に入れ替わり、雌雄互い違いの型をしたりして、お客様の眼を楽しませます。

今回、更に特殊な演出があります。かなり専門的なことですので、詳細を述べるのは省略しますが、「乱」の舞の最初は通常の「中之舞」と同じ始まり方なのですが、「乱」に導入する部分で、「中之舞」の演奏からゆるやかに、しかも突然「乱」に入るようなイメージになります。
この演出は、「呂掛り(りょがかり)」と言い、おそらく、明治の末に、名人の竜虎と言われた「松本長・野口兼資」のペアで上演されて以来の演出(16代宝生宗家・宝生九郎知栄が監督)で、当時の伝書を掘り起こしての作業となりましたので、研究を重ねて、家元や幹部とも相談しながら、念入りに囃子方とも申し合わせております。
特に、お囃子に詳しい方には、大変興味深いものとなるでしょう。

そして、また珍しいのが、笛の流派が「森田流」であること(杉信太朗師)。東京の宝生流では、森田流を相手にした『乱・和合』は、記録にありません。

終演後、「能楽余話・友と好敵手」と題して、同世代の各流若手能楽師(喜多流・大島輝久、観世流・坂口貴信、宝生流・高橋憲正、金春流・中村昌弘)が舞台上で、能楽評論家の金子直樹氏の司会のもと、トークを致します。

今回、珍しいこと尽くしの企画公演「時の花」。ぜひご来場ください。

お問い合わせ・お申し込みは、当ホームページ、または宝生能楽堂(03-3811-4843)まで。

広忠の会 能『井筒』(11月30日 日曜日 14時開演 矢来能楽堂)

広忠の会表

広忠の会裏

11月30日(日)14時開演「第7回 広忠の会」(於・矢来能楽堂)にて、能『井筒』を勤めさせていただきます。

「広忠の会」は、ご存じ、葛野流大鼓方・亀井広忠師が主催する演能会。囃子方が個人演能会を主催することは大変珍しく、舞台・私生活共に全力投球の広忠師ならでは。「広忠師」などというのは照れくさく、彼とは高校終わりの東京藝術大学受験時からの旧友で、同い年(今年満40歳)。

彼は、葛野流大鼓方宗家で人間国宝の亀井忠雄師を父、歌舞伎囃子方先代家元・田中佐太郎師を母に持つ、伝統芸能のサラブレッド(弟君お二人は、現田中流家元・田中伝左衛門師と伝次郎師)。
かたや、私は全く能とは関係のない家に生まれ育った無頼人。そんな私がおこがましくも、彼のことをずうっとライバルと目して、この道に精進してきました。

高校生で初めて出会ったときには、既に彼は当然この道で名前・実力ともに認められて、稼ぎを持っていました。
しかし、そんな先を行く彼に追いつけ、追い越せという気持ちを持ち続け、彼の存在や言葉のお蔭で、芸の面、その他で引き立ててもらったと思っています。

そんな広忠師が、今回3回連続公演で、観世流・宝生流・喜多流の同世代若手3名に、大曲を舞う機会を与えてくれます。

1日目は、11月29日(土)梅若能楽学院会館にて、能『朝長』シテ 坂口貴信師(観世流)

2日目は、11月30日(日)矢来能楽堂にて、能『井筒』シテ 和久荘太郎(宝生流)

3日目は、12月2日(火)銕仙会能楽研修所にて、能『山姥』シテ 大島輝久(喜多流)

 

坂口・大島両師とも、流儀は違えど、これまた私がライバルと見ている2人(片想いかもしれませんが)。
日にちは違いますが、立会能(たちあいのう)と受け止め、負けるわけにはいきません(既に負けてるかもしれませんが)。

私の『井筒』もさることながら、『朝長』『山姥』も、通常では若手には許されない、「超」の付く大曲。広忠師も、プロデューサーとしてずいぶん思い切ってくれました。

『井筒』の能は、他流では案外若いうちに勤める機会があるようですが、宝生流では「奥伝物」として大変大事に扱われています。30代で勤めることはまずあり得ませんが、11月13日が誕生日の為、演能当日の11月30日には40代になっていることや、流儀以外からご依頼いただいたお舞台、ということもあり、家元と流儀長老のお計らいにより、今回特別にお許しを頂きました。世阿弥の名曲『井筒』、現時点での私を全て投入し、大事に勤めさせていただきます。

チケットは、9月9日(火)より発売開始。全席指定席(8,000円)で、ご予約時に先着順にてお席をお選びいただきます。

お問い合わせ、お申し込みは、和久荘太郎ホームページまたは、三響会(電話03-3542-2800 平日12時から17時)まで。

座席数が少ないため、早目のご連絡をお待ちしております。