学校巡回公演(福島・山形)

一昨日は、文月能(ふづきのう)という、女性能楽師がシテを4番勤める宝生会主催の催しに出勤、昨日は、掬水会(きくすいかい)・みやび会という、水上 優師ご社中の発表会の助演。いずれも、プロとアマチュアの差はあれど、演者の熱量のある充実した催しでした。

 

本日からは、宝生会が文化庁から承った、学校巡回公演。昨年同様、各地小学校をまわり、子供たちに狂言『柿山伏』と能『黒塚』を観て頂きます。

今回私は、福島県の二本松市・いわき市・南相馬市二か所と山形県の遊佐町を回り、シテ2回、後見3回を勤めます。

昨年、浜松を拠点に愛知県・静岡県の小学校をまわった折のある学校では、ワキの阿闍梨が数珠をさらさらと押し揉んで黒塚の鬼を調伏するラストシーンで、子供達も自然に誰ともなくワキと一緒に手を擦り合わせ始めて、低学年とみえる子供達が総立ちで一緒に鬼を調伏してくれて、会場が一体化したライブ会場の様相を呈していました。子供の解放された心は素晴らしいと感じました。

また今年も、どんな出会い(ハプニング?)があるか、楽しみです。

烏帽子折の斬組(チャンバラ)

第6回 和久荘太郎 演能空間」の、能『烏帽子折』のチャンバラの型がやっと完成しました。

 

『烏帽子折』の後半は派手なチャンバラがあり、終盤の地謡の中での、牛若丸(子方。凜太郎)と熊坂長範(後シテ。私)の戦う部分は、「型附(かたつけ)」という伝書が存在して、動きが厳格に決まっているのですが、その前の牛若丸と立衆(ツレ。6人の後輩)の戦う部分は、斬組(きりくみ)といって、自由に作ってよいのです。但し、自由と言っても、各流に伝わるある程度の規範があり、それをあまり逸脱することは許されません。

今回は、当然ながら主催者でシテでもある私が作りましたが、なかなか苦心しました。牛若丸が立衆6人と戦って全員倒すのですから、激しい中でも徐々に盛り上がっていかなければ、お客様は見ていて飽きがきてしまいます。実際に人を相手に動いてみて作ると良いのですが、なかなかそのような時間もないので、自分一人で家の舞台で動き回って、ああでもない、こうでもないと、脳内でイメージを膨らませて、とりあえず机上の空論で数日掛けて作り上げてみて、今日実際に凜太郎に指導しながら少しの改良をして、完成にこぎつけました。

かなり複雑ですから、完成した状態で凜太郎に覚えさせないと混乱させてしまいます。できるだけ今後は変更しなくて済むように、完璧を目指して作り上げました。

凜太郎の『烏帽子折』の稽古は、その斬組部分以外の謡や型などは大方早いうちに身に付けましたので、今後はこの斬組を覚えて練り上げる稽古も並行して始めるのです。

このような苦労も、誠にやりがいがありますが、正直なところ、『烏帽子折』という大曲を手掛けてしまった後悔の念を、ほんの一瞬持つときがあります。しかし、それを振り払って、これを機に私も成長し、お客様のお喜び頂くお顔を見たいがために、日々奮起しております。

正面席残り少なく(演能空間 残席状況)

「第6回 和久荘太郎 演能空間」能『烏帽子折」のチケット、7月1日に一般販売開始以降、幸先良くたくさんのご注文を頂いております。

 

正面席は、前方のブロックは完売し、後方の一段上がったところの中でも、後ろから3〜4列が残っている、という状況です。後方となりますが、昔は「貴人席」と言って、舞台のみならず、橋掛りや揚幕まで、全体が見渡せる席として、帝や、将軍・大名が座った辺りの席ですので、これもおススメの席です。

 

脇正面席は、前から5列目までは完売、6列目以降は余裕があります。

 

中正面席や自由席及び学生席に関してはまだまだ余裕があります。

 

お早目のお申し込みをお願い致します。

販売開始しました!

第6回 和久荘太郎 演能空間 のチケットの一般販売を、本日より開始いたしました。お申込みは、演能空間公式サイト、またはメール(info@hosho-waku.net)、またはカンフェティチケットサイトにてお願い致します。

宝生能楽堂にても、自由席(脇正面後方席)のみ販売しております。

当日券は、残席がある場合のみ販売致しますので、予めの早めのお求めを何卒お願い申し上げます。

学生さん

昨日、今日の2日間にわたって、全国宝生流能楽連盟(全宝連)という、宝生流の能楽学生サークルの全国組織の発表会が京都・金剛能楽堂にて開催され、学生さんが日頃の稽古の成果を発表なさいました。

昨日の1日目は、残念ながら豊田で能『芦刈』を舞った為に拝見できませんでしたが、本日は、指導している学校のほか、他大学の発表もほとんど見ることができました。

中でも気になった、仕舞『桜川』を舞ったある初対面の学生さんに後で声を掛け、「あなたは能をよく観ているでしょう」と聞いたら、「はい」と。やはり。

その『桜川』には、いわゆる現代的な思考の「こう見せたい」というあからさまな意図や、奇をてらったようなところが無いのに、ふっと景色が見えました。それ以前に身体の運用法(使い方)もよく人の舞台を見て研究しているな、と感じました。

玄人、素人の別なく、能の上達には、舞台を数多く見ることが欠かせません。「能」有っての「仕舞」、「能」有っての「素謡」です。能をよく観ている方の舞台は何かが違うのですぐに分かります。

上手でない舞台も勉強になります(失礼)。何か得るところが必ずあります。稽古だけではなかなか上達は望めません。

この学生さんの指導者も良いのでしょう。この学生さんが失礼ながら作品だとすると、作者の「丁寧に」という思いが伝わりました。料理でも、家具でも、書画でも同じことではないでしょうか。

私としては、色々考えさせられる学生さんの発表会でした。

『悪しからず』

先程、豊田市能楽堂・納涼能にての能『芦刈』、おかげさまでなんとか舞い勤めました。『悪しかり』とはならず、『悪しからず』程度ですが。

 

大勢のご来場、誠に有難うございました。

明日から

令和初の台風・3号が近づいています。西日本の方は気が気でないことでしょう。お気をつけ下さい。

 

私は、明日から3日間、役が続きます。

明日は、東京・宝生能楽堂にて能『土蜘』の頼光、

明後日は、愛知・豊田市能楽堂にて能『芦刈』のシテ、

明後日は、京都・金剛能楽堂にて仕舞『笠ノ段』。

そう、台風に向かって西に移動するのです。どこですれ違うことやら。台風の動きは思ったよりも早いようなので、明日には関東を抜けている可能性が高いようですが、梅雨前線の影響もあり、大雨には油断できません。

 

台風と聞くと、昨年9月の名古屋にての「第5回  和久荘太郎  演能空間」当日に名古屋に直撃したことが思い返されます。東海道新幹線は午前中に異例の全線運休判断。幸い、午前中に申合せ(リハーサル)を設定していたため、東京からの役者は朝イチで新幹線に乗って頂いたので、役者は1人も欠けることはありませんでしたが、東京方面からのお客様はほとんどご来場頂けませんでした。

13時半開演のところ、前日の予報では11時名古屋上陸予定でしたが、天が味方したか、台風のスピードがどんどん遅くなり、実際に上陸したのは終演後の16時過ぎ。なんとか無事開催出来て、終演後、お客様に妻と共にお声掛けして、急ぎお帰り頂きました。

400席ほど販売済みのところ、ご来場者は約200名。あの未曾有の台風のなか、よくお越し頂きました。未だに時々思い出しては、皆さんに感謝しております。

 

今年の「第6回 和久荘太郎 演能空間」(9月23日祝日。東京・水道橋・宝生能楽堂)は、なんとか無事に開催したいものです。

「渋谷能」第四夜 能『藤戸』

7月26日土曜日、渋谷の東急セルリアンタワー能楽堂にて、Bunkamura30周年記念の「渋谷能」の第四夜が開催され、宝生流の能『藤戸』が上演されます(シテ 高橋 憲正)。

(詳細はこちらをご覧下さい。)

 

私は、僭越ながら地頭(じがしら)を勤めさせて頂きます。

とかく、一般のお客様はシテ、ワキなどの立ち役に目がいくことと思いますが、能1番の成否を分けるのは地頭の仕事なのです。特に宝生流は、地謡に重きを置いており、中でもその統率者の地頭にはシテと同格かそれ以上の力量を求められます。

なんて、自分でハードルを上げているようですが、私の芸人魂を鼓舞しているのです。

 

『藤戸』は、宝生流のみならず、どの流派でも重く扱う曲ですから、ましてやその地頭となると責任重大。まだこの世界では若手と呼ばれてしまう44歳ですが、今出来る力を振り絞って稽古と本番に臨みます。

 

ご来場を、シテの高橋 憲正さんと共に心よりお待ちしております。

求められています

昨日、都営三田線車内にこんな広告が。

 

連絡してみようかな‥。

能『芦刈』を舞います(6月29日土曜日 豊田市能楽堂 「納涼能」)

来週土曜日の6月29日、豊田市能楽堂の「納涼能」にて、能『芦刈』のシテを勤めます。(詳細は、豊田市能楽堂ホームページをご覧下さい。)

 

豊田市能楽堂でシテを舞わせて頂くのは、2年前に能『舎利』を舞わせて頂いてから今回が2回目。宝生流の定式能や、自分が主催の催しではなく、このように能楽堂や自治体からご依頼頂いてシテのお役を頂くというのは、本当に役者冥利に尽きます。有り難いことです。きっと裏には、ご推薦頂いている方がたくさんあってのお引き立てであること充分理解しており、心から感謝し、大事に勤めたいと思います。

 

『芦刈』は、夫婦情愛の物語。貧乏によって図らずも別離してしまった夫婦が難波の里で偶然再会します。

私が演じる男は、零落の末、芦(水生植物のアシ。ヨシとも)を売って糊口を凌ぐ生活。妻は名家の乳母となり出世して輿に乗る身分になっているところへ、男は知らずに、面白く笠尽くしの芸を見せながら芦を売ります。

それと気付いた妻のたっての希望により、男は芦を直接妻の乗った輿に届けようと近づくと、男は妻であることに気付き、我が身を恥じて小屋に隠れてしまいます。

妻と男は、和歌のやり取りによって心を和らげ、再び夫婦となり、男は烏帽子・直垂(武士の正装)を着て、妻とその一行の前で舞を舞い、めでたく都に帰ります。

 

先日の『草紙洗』では、小野小町役でしたので、当然ながら面(おもて。能面のこと)を掛けましたが、今回は零落した若い男役ですから、私にピッタリ!面は掛けずに、素顔で演じます。これを「直面(ひためん)」と称して、自分の顔を面のつもりで扱う心得があります。感情表現を露わにしてはいけないのです。面を掛けるよりもかえって難易度が上がる、と考えることもできます。

 

奥さんの役は、内藤飛能さん。背の高いグラマラスな奥さんです。2年前の『舎利』では、内藤さんは韋駄天、私は韋駄天に退治される足疾鬼(そくしっき)という悪い鬼役。能は本当に色々な曲や役がありますね。

 

豊田市能楽堂は、設備がきれいで、見所(けんしょ。客席)の大きさもちょうど良く、役者の息遣いが感じられる素敵な舞台です。

全指定席。現時点でまだ少しですが席は残っているようです。ぜひお出かけ下さい。チケットのお申し込みは、こちらまで。