能『芦刈』を舞います(6月29日土曜日 豊田市能楽堂 「納涼能」)

来週土曜日の6月29日、豊田市能楽堂の「納涼能」にて、能『芦刈』のシテを勤めます。(詳細は、豊田市能楽堂ホームページをご覧下さい。)

 

豊田市能楽堂でシテを舞わせて頂くのは、2年前に能『舎利』を舞わせて頂いてから今回が2回目。宝生流の定式能や、自分が主催の催しではなく、このように能楽堂や自治体からご依頼頂いてシテのお役を頂くというのは、本当に役者冥利に尽きます。有り難いことです。きっと裏には、ご推薦頂いている方がたくさんあってのお引き立てであること充分理解しており、心から感謝し、大事に勤めたいと思います。

 

『芦刈』は、夫婦情愛の物語。貧乏によって図らずも別離してしまった夫婦が難波の里で偶然再会します。

私が演じる男は、零落の末、芦(水生植物のアシ。ヨシとも)を売って糊口を凌ぐ生活。妻は名家の乳母となり出世して輿に乗る身分になっているところへ、男は知らずに、面白く笠尽くしの芸を見せながら芦を売ります。

それと気付いた妻のたっての希望により、男は芦を直接妻の乗った輿に届けようと近づくと、男は妻であることに気付き、我が身を恥じて小屋に隠れてしまいます。

妻と男は、和歌のやり取りによって心を和らげ、再び夫婦となり、男は烏帽子・直垂(武士の正装)を着て、妻とその一行の前で舞を舞い、めでたく都に帰ります。

 

先日の『草紙洗』では、小野小町役でしたので、当然ながら面(おもて。能面のこと)を掛けましたが、今回は零落した若い男役ですから、私にピッタリ!面は掛けずに、素顔で演じます。これを「直面(ひためん)」と称して、自分の顔を面のつもりで扱う心得があります。感情表現を露わにしてはいけないのです。面を掛けるよりもかえって難易度が上がる、と考えることもできます。

 

奥さんの役は、内藤飛能さん。背の高いグラマラスな奥さんです。2年前の『舎利』では、内藤さんは韋駄天、私は韋駄天に退治される足疾鬼(そくしっき)という悪い鬼役。能は本当に色々な曲や役がありますね。

 

豊田市能楽堂は、設備がきれいで、見所(けんしょ。客席)の大きさもちょうど良く、役者の息遣いが感じられる素敵な舞台です。

全指定席。現時点でまだ少しですが席は残っているようです。ぜひお出かけ下さい。チケットのお申し込みは、こちらまで。