大人になった女子たちへ
朝日新聞の、「大人になった女子たちへ」という、漫画家の伊藤理佐さんのコラムを時々楽しみに読んでいます。
今朝の寄稿はなかなかに、私の普段思うところに相通じて、共感と同時に改めて考えさせられました。
伊藤さんがラジオで偶々聴いた、という言葉を大まかに抜粋すると、
歌というのは、理解した人が歌うとエグイ。
逆に、理解していない人が歌うと、せつなかったり泣ける。
悲しい歌は「悲しい顔」で歌うとダメで、逆に「笑顔」で歌う。
(※和久注、「エグイ」はこの場合、若者言葉で使うときの良い意味ではなく、おそらく本来の意味の「アクが強い」かと。)
このことは、能の表現にも通じると思います。もちろん、我々職業人は、曲の時代背景や言葉の意味、登場人物の心情などを能く理解した上で舞台を勤めるべきだとは思いますが、それを生のまま舞台に乗せようとすると、嫌味になったり、お客様が違和感や嫌悪感を感じたりします。
悲しい場面で、役者が悲しそうな声を出したり、囃子方で言えば悲しそうな掛け声を掛けたり、という、単純表現を喜ぶお客様もいらっしゃるとは思いますが、能の目指すところはそこでは無いのです。
私自身も、実は他流派(当流のことも!)の舞台を忍んで観に行く(もちろんチケット代を払って)ことが時々ありますが、表現が押し付けがましかったり、泣かそうとしたりする意思が見えると、「サーっ」と潮が引くように興醒めしますので、自分への戒めとして受け取ってお土産に持ち帰っています。
まあ、最終的には役者・お客様共に、人それぞれの「志向」だとは思いますが。