二つになってぞ失せにける

一昨日の能『烏帽子折』の最後に、後シテ・熊坂長範役の私が、牛若丸役の凜太郎に切り倒される型として、幕の前で「仏倒れ(ほとけだおれ)」をしました(空中であぐらをかいて落ちる「飛上り平臥」でも良いのですが、選択はシテ本人に任されています)。

 

そう、まるで仏像がそのまま後ろに倒れるように見えることから「仏倒れ」と言いますが、体にとってリスクの高い型で、うまくやらないと後頭部を打って脳震盪を起こします。私もそう若くはないので、倒れる直前に心の中で、

 

「では みなさん おせわになりました さようなら 南無三宝」

 

と唱えて倒れました。

 

まだ映像を見ていないので何とも言えませんが、比較的綺麗に倒れたようで、後頭部を打たずに済みました(秘密のコツがあるのです)。が、下に穿く半切(はんぎれ)という袴を支える為の「腰羽根」(こしばね。通称・バネ)が見事に真っ二つに!(ここの地謡は、「一人と見えつる熊坂の長範も二つになってぞ失せにける」)

 

これが、

 

パカっと真っ二つに(手は凜太郎です)

 

凜太郎が、「バネがお父さんの身代わりになってくれたんだよ」と言って、バネを仏壇に供えてくれました。折しもお彼岸。

 

いいこと言うねえ。