虎馬
本日、「4月月並能延期公演」にて、能『八島』のツレを勤めました(シテ 佐野 登)。
催し名の通り、4月の月並能が新型コロナ禍により延期した催し。私は元々『八島』のツレではなかったのですが、本日に延期したことにより、本来の演者が不都合になった為、代役として勤めました。
この『八島』のツレには、若いときに苦い思い出があり、ある意味トラウマだったのですが、本日何とか無事勤めることができ、やっと克服しました!
18年前(27歳のとき)、『八島』のツレを勤めた折に、曲中のクライマックス(いわゆる「錣引きの語り」)で、大間違いをしたのです。「平家方」と「源氏方」に関して、逆のことを言ってしまい、終演後楽屋にて、当時ワキを勤められた故・宝生閑師に強くお叱りいただいたのです。
舞台に関して、過去のうまくいったことは記憶から外れていることが多いのですが、失敗は全て覚えています。その代わり、日常の記憶に関しては「そんなことあったっけ?」ということがほとんど。私の場合、ただでさえ脳みそのシワがそれほど多くないのに、「能」に関して「脳」の記憶領域のほとんどを使ってしまっているため、日常生活に支障が出ることが多い、偏った人間です。
観た映画もほとんど忘れているから、毎回感動できます。読んだ本の内容も(場合によっては書名も)忘れているから、同じ本を何回も買ってしまうことも(その場合、若い方にプレゼントします)。
但し、不思議なことに「能」に関する本は覚えているのです。
元々、この能の道を本格的に志すまでは多趣味だったので、高校1年生で本職になると決めた時点で、その他全てのことは捨てて、能だけに注力したのです。その時の習い性がいまだに残っている面があって、生活に支障をきたすことがあります。
トラウマ克服の話から話が変わっていきましたが、私の中では繋がっています。