来年に向けて
この夏、初めて自分専用の装束を作りました。
「箔(はく)」と通称する、女性の役専用の着付け。
拡大写真。「七宝繋ぎ」という、定番の紋様です。
装束としては、それほど高額のものではありませんが、能楽師人生で初めて自分で作った装束。感激です。他流の同世代の仲間は、装束のみならず面(おもて。能面のこと)までも、早いうちから皆自分で少しずつ手に入れていて感心していますが、宝生流は、家元以外は面・装束を持たない原則があり、演能の際には(もちろん有料で)拝借できますので、収集の必要がなく、大変恵まれています。
しかしその昔は、直接身につけて汗になる「着付け」や「鬘」くらいは各役者が自前で用意したとのこと、私もそれ位は持とうと20年ほど前から考えており、毎年赤字の家計ですが、夢実現のために別にそれ専用の貯金をしてきました。なかなかお金が貯まらなかったのもありますが、来年、やっと「箔」を使う役(12月14日土曜日 五雲会『班女』宝生能楽堂、12月22日日曜日『羽衣』横浜能楽堂)をいただいたので、この夏に購入を決めたのです。
『班女』と『羽衣』の装束は、いずれも着付けがはっきりと表にでる着方。『班女』は後シテで片袖を脱ぎ、『羽衣』は両袖を露わにして登場します。私は、身長のわりに手が長く、拝借する装束ではつんつるてんになり、見栄えが良くありません。そういうこともあって、念願だったのです。
着物でもそうですが、仕立てて直ぐに使用するのは良くありませんので、1年半程箪笥で寝かせて落ち着かせてからデビューさせます。楽しみです。
次は、自分専用の「鬘」を作るために、新たに貯金を始めます。