日焼け
日焼けには、大変気を使っています。
特にお役の前は。
麗しき女性の役の、装束からちらと見える手元や、面の脇から見える顔や首もとが真っ黒では、幻滅しますね。
地謡の端っこに座っていても同じこと。
日焼けというのは、その人の日常生活を如実に表しています。
日常生活を舞台上に持ち込むと、お客様は違和感を感じます。
「ああ、あの人はゴルフ焼けだな」
とか、
「南国で楽しんできたんだな」
など、観能に集中できませんね。
かといって、能役者も舞台を離れれば現代に生きる一人の人間ですから、遊びを楽しんでいけないことは無いでしょう。ただ、人によって気をつけ方が違いますが。
数年前の一時期は、大先輩に倣って日傘を使ったことも。ただ、気恥ずかしくて長続きしませんでしたが。男用の日傘がブームになってくれることを切に望みます。
この夏、子供をプールに連れて行きましたが、凜太郎は来月の月並能で、『花筐』の子方の役を頂戴しているので、大変気を使います。しかも天皇の役。実際はどうだったかはわかりませんが、田舎から出てきたとはいえ、真っ黒な天皇はイメージに合いません。
また、同日の月並能で、私も『敦盛』のツレを勤めますので、草苅男の役とはいえ、日焼けするわけにはいきませんので、子供ともに日焼け止めをしつこいほど塗りたくって、何とか難を逃れました。
しかし、体全体に塗ってはいたのですが、顔と首と手を中心に塗り直しを重ねていた為に、そこだけ白くて、後は見事に日焼けという、奇妙な焼け方。
その世界にはその世界なりの、色々な気の遣い所がありますね。