5月14日五雲会・雲雀山


来る5月14日(土)五雲会(水道橋・宝生能楽堂)にて、能『雲雀山(ひばりやま)』のシテを勤めます。

 

題名の「雲雀山」は、大和(奈良)と紀の国(和歌山)の境にある山の名で、ここを舞台に物語が展開されます。

 

雲雀山の谷陰の粗末な庵に隠れ住む中将姫(ちゅうじょうびめ・子方)を、草花を売って養う侍従の乳母(めのと・シテ)。今日もまた、春の草木を手折り、里へ下りてこれを売りに行きます。

 

心無い人(継母)の讒言を信じ、娘である中将姫を雲雀山で殺せと命令を下した、右大臣豊成(とよなり・ワキ)は、先非を悔い、この雲雀山に姫を探しにやってきます。

 

山中で、豊成一行と出くわした侍従は、それとも知らず、豊成の家来と問答を交わします。夏に近い晩春の、風流で軽やかな風情です。

 

中将姫を、この4月で小学生になった水上達くんが勤めます。鬘をつけて女の子になった愛らしい子方は、姫の哀れさ不憫さをいっそう際立たせることでしょう。

 

この手の曲の定石通りハッピーエンドで、豊成は中将姫を連れて都へ帰って行き、能を見るお客様に、良い気持ちのまま帰途についていただきます。

 

でも、本当に帰らないで下さい。まだもう一番、大曲『石橋(しゃっきょう』が残っていますから。

『石橋』は、我々能楽師の登龍門である『道成寺(どうじょうじ)』や、『乱(みだれ)』と並ぶ、秘曲の一つで、澤田宏司師が勤めます。

 

大昔の中国を舞台として、前半は仏教観を語り、静寂な雰囲気ですが、終盤、激しい囃子「乱序(らんじょ)」に引かれて、想像上の動物、獅子が現れ、牡丹の咲き乱れるなか、激しく舞い狂います。

この間10分もありませんが、他の能には、類を見ないほどこの上無く激しく、アクロバティックな動きで見る者を魅了することでしょう。

 



このような大曲を初演することを、「披く(ひらく)」と言い、慶事の一つです。

実は、私、披き物の一つである『乱(みだれ)』を、本年12月の五雲会にて、披かせていただきます。

先のことですので、また改めてお知らせいたします。  




5月五雲会は、他に『嵐山(あらしやま)』シテ小林晋也、『通盛(みちもり)』シテ山内崇生。

いずれも見どころ満載のお勧め曲です。

 

お誘い合わせの上、ご来場を心よりお待ちしております。

 

チケットは当ホームページまで。