有難うございました③(第4回 和久荘太郎 演能空間)

(続き)

『自然居士』の笛は、森田流の若きホープ・杉信太朗師。今回、『自然居士』『花月』とも、羯鼓(かっこ。2本の撥で腹に付けた鼓を打つ軽妙な舞事)が重なる為、(実は、ここぞとばかりに)私からたってのお願いをして、「モヂリ」という、普段と全く異なる譜(メロディー)で演奏して頂きました。

小書(こがき。特殊演出)ではなく、本来、笛方が興に乗った時に、打ち合わせ無しに即興で演奏するものですが、失敗の無いように、事前にしっかりと打ち合わせました。

 

小鼓は、演能空間当日の直前に人間国宝に指定された、大倉流宗家の大倉源次郎師。

大鼓は、葛野流家元の亀井広忠師。

このお二人で、自然居士の丁々発止の人商人とのやりとりを、大変盛り上げて頂きました。むしろ、この囃子に対抗するのに非常なエネルギーを労して大変。お二人に私の力を試されていると感じ、気合いが入りました。

 

そして、肝心要の地謡は、金井雄資師の地頭、辰巳満次郎師の副地頭という最高の陣形。強い地で、複雑な現在物の一番を作り上げて頂きました。

 

後になりましたが、凜太郎の能『花月』の陣形も、この上なく素晴らしかったこと。笛・一噌隆之師、小鼓・鵜沢洋太郎師、人間国宝の大鼓・亀井忠雄師。そして、宝生流家元・宝生和英師の地頭。

ワキの殿田謙吉師は、再会した息子・花月に対する慈愛のオーラが後見座の私からもひしひしと伝わったので、お客様からはなおのことでしょう。

 

今回は(も)、能は総合芸術、演者のお力に加えて、お客様の息を詰めたり、涙したりの、ライブのエネルギーで成り立っていることを、改めて感じることが出来た、私にとっての最大の勉強の機会となりました。

 

心より、皆様お一人お一人に感謝申し上げます。