乱能
昨日、宝生流祖神祭「乱能」が大盛会にて終了しました。
師走のお忙しい中、大勢のご来場、宝生流の一員として感謝申し上げます。
普段見られない、能楽師の専門外のぎこちないな姿に、皆様笑い疲れたことと思います。
楽屋でも、幕の隙間やモニターから観て、皆大爆笑でした。
私自身は、能『鞍馬天狗・白頭』の大鼓を勤めましたが、後先考えずに本気で打ち込んだら、右手がグローブのように腫れて、ペンを持つことも難儀しております。
大鼓方という仕事の大変さが身に沁みてわかりました。一日に数番打つこともある大鼓方、私など、能一番でこの調子では務まりません。
終演後、数名の大鼓方の「右手」を見せてもらいましたが、みなその道の職人の手をしています。若い内から、専門に打ち込むことによって、右手の皮膚が進化していくようです。
私のこのグローブのような右手では、扇を持ってシオリ(泣く型)をしても様にならないので、早く腫れが引くことを願っています・・・。
今回のために、無理を申してお稽古願った國川純師(高安流大鼓方)には、曲の位のみならず、幕内のお調べや、舞台上の立居の作法まで、細部にわたりご指導いただき、おかげ様で自信を持って舞台に立つことができました。
牛若丸役で好演した盟友の亀井広忠師(葛野流大鼓方)をはじめとした囃子方数名の方から、終演後に私の大鼓を称賛いただき、お世辞とは知りつつ嬉しいのですが、本業でこれほど褒められた経験がありませんので、転向を考えた方が良いのかもしれません。
いやしかし、これを本業にしたら、大鼓は褒めていただける訳もなく、今度は謡を(お世辞で)褒めていただいたりして・・。
地謡を統率なさった野村萬師(和泉流狂言方)と亀井忠雄師(葛野流大鼓方)には、「和合」と「引っ張り合い」を舞台上で、まるで会話をしているように教えていただいたように思います。得難い経験をさせていただきました。
なお、お二人には、囃子方4名・後見2名・地謡8名の計14名に山伏の「兜巾(ときん)」と「鈴懸(すずかけ)」を着けて出演するコスプレをお許しいただいたこと、両師の度量に感服しました(出番直前に「舞台は真剣に勤めますので」ということでお願い申しましたら、快くお許しいただき、御自らもお着けいただきました)。
前回の乱能は14年前だったことを考えると、次はいつ開催されるかわかりませんが、各役がお互いの苦労を理解し合う良い機会になり、私も大変勉強になりますので、お客様と共にまたの機会を楽しみに致します。