チョンマゲ

今週土曜日(7月16日)、五雲会(水道橋・宝生能楽堂)にて、『歌占』のツレを勤めます。
 
「歌占(うたうら)」とは、歌を書き付けたたくさんの短冊の中から1枚を引かせ、その歌により占う方法。
シテの渡会某(わたらえのなにがし)は、短冊の付いた小弓を持ち、歌占を生業として諸国をさすらっています。
 
渡会は、ある時急死しましたが、3日後生き返り、地獄の有り様を見てしまったからか、まだ年若いのですが、白髪で登場します。
 
一方、父親を失った幸菊丸(子方)は、故郷の伊勢を立ち出でて、はるばる加賀の国・白山の麓までたどり着き、里人(ツレ)と共にこの歌占を引きます。
まず里人が占を引き、自分の父親の病気のことを尋ねますが、快方に向かうとの結果を聞き喜びます。
続いて、幸菊丸も行方不明の父親のことを占ってもらいますが、もう既に逢っている、との不思議な占。
よくよく尋ねると、この渡会こそ、幸菊丸の父親だったのでした。
 
という、かなり無理な設定。
この曲は、ストーリーなんか半ばどうでも良いのです。この後に続く、シテによる地獄の有り様を舞い謡う、「地獄の曲舞(くせまい)」を見せることに主眼を置いていると言っても過言ではないでしょう。
 
最後は、能の常套手段の例に漏れず、親子伴い故郷の伊勢に帰ってめでたしめでたし。
 
里人であるツレは、いなくたってどうということはない役ですが、物語を引き出す役に終始します。正にワキそのもの。
実際、観世流・宝生流以外では、ワキ方が勤めるようです。
現実の男性なので、面(おもて・能面のこと)をかけない直面(ひためん)で、表情を出すことは許されません。
 
直面は、気恥ずかしいのです。せめてチョンマゲだけでもつけさせてもらえば、役になりきれるのに、といつも思います。
 
他に、『草薙(くさなぎ)』辰巳大二郎・『半蔀(はしとみ)』亀井雄二・『土蜘(つちぐも)』金森隆晋。
正午始まりです。面白い曲が揃いました。ぜひお越し下さい。