直面雑感
再来週(4月14日土曜日)勤める『小袖曽我』は、直面(ひためん)の能です。
直面とは、面をかけずに素顔で舞台に立つこと。
自分の顔を能面として扱う心得を要求されるので、表情を出すことは許されません。
実は私、直面のシテを勤めるのは初めて。
ツレや仕舞、舞囃子などはもちろん直面で数多く勤めておりますが、シテとなるとどうなるのでしょうか。
自意識過剰なだけかもしれませんが、顔を見られている、と感じるのが恥づかしいのです。
今回は直面と言っても、侍烏帽子(折烏帽子とも)という物を頭に載せているので、それ程は心配はしていません。
歌舞伎の化粧と同じく、能の場合も面をかけたり、鬘や冠をつけることによって、「変身」を遂げて、腹をすえる事が容易くなるのかもしれません。
鏡の間で面をかけて、自分の姿を見ていると、やはり「その気」になってきます。
この「鏡の間で床几にかけて鏡に自分を映す」行為の時間には、大変個人差があるようです。
出番のぎりぎりまで面をかけずに、直前にかけてすぐ幕の前に向かう人もいますが、私は、かなり早い段階で面をかけて、自分の姿を見込んで、精神を統一したいと考えております。
これは、実はシテの特権(他の役者は出番まで立ったまま)なのですが、直面のシテもやはり、装束が着いたら鏡の前で床几にかけて、自分の姿を映さなければなりません。
どんな気持ちになるのでしょうか。
6月には、名古屋宝生会定式能にて、『是界(ぜがい)』という、これまた直面(前シテ)の能が控えています。