声帯ポリープの原因

本年、大厄の年(数えで42歳)ですので、年明けに厄払いに参りましたが、それでもやはり身辺色々あります。
これ位で済んだ、と考えるべきでしょうが、身体の変わり目ということでしょうか。

声帯ポリープに関しては、よくよく思い起こせば、ここ2年くらい裏声が出にくくなったとは感じていました。
能の謡では、裏声は一切使いませんが、得意だった目玉のおやじ(ゲゲゲの鬼太郎)の物まねの声がかすれてきたのです。

昨年11月末の広忠の会における能『井筒』は、分不相応なお役を頂戴しましたので、時間をかけて精魂込めて稽古に打ち込みました。しかし、本番一週間前の申合せが済んだあたりから重い風邪をひいてしまい、声が出にくい状態での当日までの稽古でかなり喉に負担をかけていました。

どうもこのあたりから、声のスタミナが無くなってきて、枯れやすくなり、また、謡った後に疲れを感じるようになっていました。
また、声の伸びが悪くなってきたことと、宝生流で多用する「甲グリ(カングリ)」という高音を出すのに、以前よりも息の圧力が必要になってきたので、これはおかしいと思い、普段通っている耳鼻咽喉科を受診したら、声帯ポリープであることがはっきりして、山王病院を紹介されました。

この病院は、耳鼻咽喉科とは別に「ボイスセンター」という、発声専門の科を擁していて、後から分かりましたが、東京在住の能楽師の多くがここで手術を受けていました。能楽師のみならず、著名な歌手・芸能人・声優・オペラ歌手なども大勢受けているようですので、それを聞いて、安心して手術を受けることが出来ました。

さて、ポリープが出来る原因ですが、喉を締める悪い発声が原因ということがまことしやかに言われます。
しかし、色々調べたり、医師のお話しをうかがうと、喉を開いて発声するオペラ歌手などでもポリープが出来ることからもわかるように、「喉を締める発声が悪いから」ということが原因の中心では無いそうです。

ポリープができやすい「体質」ということはあるようですが、あくまでも「酷使」が原因。

聞けば聞くほど、能楽師でも囃子方、狂言方、シテ方他流問わず、結構私より若いうちに同じ手術をした方も沢山いらっしゃることがわかり、色々な方にお話を伺うことが出来て、励まされました。
中でも、当流の先輩、金森秀祥氏には親身で懇切丁寧なお話をうかがい感謝しております。

「厄年」に手術を受けている方が多いのも不思議。歳の変わり目で、今まで通りにはいかないということでしょう。

自らを鑑みれば、毎日、朝起きて登校前の子供の稽古の後、自分の稽古。その後ひねもすお弟子さんの稽古を全力・フルボイスで発声していたのですから無理もありません。

今後は、本番の舞台以外は「ちょっとだけ」加減しようかと考えています。お許し下さい。